2024年11月22日(金)

#財政危機と闘います

2022年11月22日

 衆知の通り、日本経済は、景気回復途上にはあるものの、お世辞にも力強い回復とは言えないので、予算規模を急激にスリム化、適正化することができない。したがって、当初予算で前年度予算から大きく削って、いくら財政当局が財政健全化に取り組む姿勢をアピールしても、結局、年度途中に補正予算が組まれるのが年中行事化している。

 こうした視点に立てば、前年度実績をベースに予算編成が行われる増分主義的予算編成において、なぜ当初予算で思い切った予算削減が可能となっているのかも説明がつく。つまり、補正予算での復活を前提に当初予算策定時に予算を削っているのだ。

財政出動すれば経済は成長するのか

 では、財政出動すれば経済は成長するというのは本当なのだろうか。図1は内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算」から実質国内総生産及び実質政府支出(=政府消費+公的資本形成+公的在庫投資)の変化率をプロットしたものである。

(出所)内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算」により筆者作成 写真を拡大

 図1によれば、確かに政府が財政出動すれば経済成長率が上向くのを確認できる。この関係を前提とすれば、政府が財政健全化に乗り出すのはかえって経済をダメにする禁じ手となるが、果たしてそれは本当だろうか。

 財政出動すれば経済は成長するとしたとしても(後で説明するように財政出動しても本当の経済成長は得られないと筆者は考えている)、慢性的な財政出動は避けるべきである。なぜなら、財政出動を行って経済が成長したとしても、財政出動額以上には財政が改善しないからだ。つまり、財政出動すればするほど財政は悪化する。

 財政出動が財政を改善するか悪化させるかは、政府債務対名目GDP比率の推移を見ればよい。同比率が上昇すれば、経済成長以上に政府債務が増えたということであるし、逆に下降したのであれば、政府債務よりも経済成長の方が大きかったことになる。

(出所)内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算」、財務省「我が国の財政事情」により筆者作成 写真を拡大

 図2によれば、趨勢的に見れば政府債務対名目GDP比率は一貫して上昇しており、財政出動により日本の財政事情が悪化していることが分かる。つまり、財政出動すればするほど財政は悪化している。


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