魚の需給バランスとグラフから読み取れないこと
FAO(2022)によると、2020年の1人当たりの水産物消費量の平均は20.2キログラムとなっています。日本の同消費量は45キログラム(18年)と、世界で最も消費量が多い国の一つです。(※全て粗食料ベース)
世界平均の消費量が増加を続ける一方で、日本では「魚離れ」がいわれ、例外的に減少しています。
FAOによると、世界の水産物の生産量は年間2億1400万トンとなっています。内訳は天然物が9142万トン、養殖物が1億2258万トンとなっています。上のグラフを見ると、天然物の生産量は横ばいで、伸びているのは養殖であることがわかります。
多くの方はこのグラフを見て、天然物の生産量は伸びていないと捉えられることでしょう。ある意味その通りなのですが、欧米・オセアニアといった漁業先進国と日本では、中身が大きく異なります。
前者は水産資源のサステナビリティを考えて、実際漁獲できる量より、科学的根拠に基づいて天然物の漁獲量を大きく制限している国々です。
一方、後者の場合は資源管理制度の不備による乱獲により資源量が激減。獲りたくても獲れず、漁獲量で記録が残る1956年から2021年は過去最低を更新しています。これが世界全体の傾向と著しく異なる日本の現実なのです。
足りなくなるとどうなるのか?
下のグラフはFAOによる魚の価格のインデックスです。2000年頃から凸凹を繰り返しながらも上昇傾向であることがはっきりわかります。近年では新型コロナウイルスで一時的に下降しましたが、再び上昇に転じていることがわかります。
さらに日本のことと捉えると、輸入に際して円安が急激に進んだことで輸入価格はこれよりも、もっと上昇しているのが現実です。
水産物の需要が増えて、その供給が足りなくなっていることが、これまでの計算と説明でお分かりになったと思います。さて、足りない分の水産物はどうなるのでしょうか?
その主な答えは「価格上昇により需要を抑制すること」となってしまいます。市場価格が需給をバランスさせる役目を果たすのです。そしてその影響は、われわれ消費者に直接影響します。