食用になる魚の比率を増やそう
下のグラフは世界の天然物と養殖物(※海藻類・海獣など除く)の生産量の推移を表しています。この中で緑色の部分が魚粉などに使用される非食用となります。
次に下表は世界の天然水産物で、食用にならない水産物(非食用水産物)の比率をまとめたものです。1990年代から2020年にかけて、徐々に非食用水産物の絶対数量が減り、食用に回る比率が増えてきていることがわかります。食用水産物の需要が増え、魚の付加価値を上げる努力がなされていることが大きな要因と考えられます。
日本の非食用向けの2021年データ(農林水産省)を見てみましょう。アジ(20%)、サバ(45%)、マイワシ(34%)を始め、小さいなどの理由で、本来食用になる魚を非食用に回している例が少なくありません。本来食用に出来る魚なので、実にもったいないです。因みに日本が輸入しているノルウェーサバでは、漁獲の99%が食用になっています。
科学的根拠に基づく漁獲枠の設定と、その枠を漁業者や漁船などに配分する方式(TAC/IQなど)であれば、水産物の食用比率は確実に上昇します。経済性から、幼魚や旬以外の漁獲を避け、水揚げ量ではなく水揚げ金額を考えて獲るようになるからです。今や水産物を無駄に漁獲できる状況ではないのです。
誤った情報による弊害
2020年12月に漁業法が改正され、漁獲枠の設定と、その枠を配分するIQ(個別割当)が進められようとしています。本来であれば、漁業先進国のように漁獲対象となる魚種の全てを対象にしていくべきなのですが、なかなか進んでいません。
進まない理由は、誤った情報が広まってしまっていることにあります。「日本とノルウェーは違う」「世界に冠たる日本の資源管理」といった内容は、大きな間違いです。
資源管理においては、科学的根拠に基づくことが基本であることに何の変わりもありません。またその成功と失敗という結果についてもはっきり出ています。日本の資源管理は冠たるどころか、北大西洋でのニシン資源復活の例など陥ってはならないケースとして捉えられているのが現実です。
世界人口の増加と日本での漁獲量の減少と年々困難になる水産物の輸入。石油や天然ガスは高くても国内での生産ができない以上、輸入に頼るしかありません。しかしながら、国内の水産物をサステナブルにして、漁船の燃料の浪費を抑えることは、漁業法の改正によりある程度抑制ができるのです。
またこれまでの水産資源管理の政策に関するPDCAは不可欠です。従来のやり方に対し、21年には、漁獲量が記録の残る1956年以降で過去最低を更新しているのは何故か? しっかりと問うべきなのです。影響がないとは言いませんが、海水温の上昇だ、外国が悪いなどと責任転嫁ばかりしている状況ではないのです。
世界人口の増加で、水産物は確実に不足していきます。陸上での養殖、培養魚肉など従来と異なる形での水産物供給も増えていくことでしょう。
一方、わが国ではまだまだすべきことや、できることがたくさんあります。「国際的にみて遜色がない水産資源管理」。科学的根拠に基づいて実行すれば、手遅れになる前ならまだ間に合う資源がいくつも残っていますので。
四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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