岸田内閣の命運、想定される展開は
23年、岸田内閣をとりまく今後の展開を考えると、いくつかのパターンが予想される。
第一は、内閣改造を断行したはいいが、新閣僚にスキャンダルなどが続出、または総選挙に打って出て敗北し、絶体絶命のピンチを招く事態。
第二は、総選挙で勝利するか、政策課題で大きな実績をあげ政権浮揚につながるという政権にとってもっとも望ましい展開だ。
もうひとつ、改造、総選挙もままならず、一方では致命傷を受けることなく、低空飛行のまま政権が存続するという可能性も排除できない。
首相にとって、もっとも考えたくないのはもちろん最初の可能性だ。
22年暮れ、政治資金にまつわる疑惑が指摘されていた秋葉賢也復興相の首を切った。4人目の閣僚更迭を行ったことで、23年1月の通常国会前の内閣改造は遠のいたとみられる。岸田首相自身、秋葉氏が辞任した12月26日夜、民放のテレビ番組で、年初の改造を否定した。
額面通りに受け止めるべきかもしれないが、今回の交代劇は、不祥事大臣、不適格な政務官の首すげ替えだけで見せ場がなかったことから、あらためて小幅な改造を行って人気ある顔ぶれを入閣させるとの観測はなおくすぶるだろう。その場合、事前の身辺調査が入念さを欠くことによって新大臣に現在と同様の問題が浮上してくれば、こんどこそ万事休すだ。
統一教会との関わりはもちろん、「政治とカネ」の問題も、どの議員にも多かれ少なかれ問題を抱えているという指摘もあるにせよ、いったん暴露されれば弁解はできない。寺田稔前総務相、秋葉前復興相が詰め腹を切ることを余儀なくされたのはまさにそのためだった。
内容にもよるが、表ざたになっていない新たなスキャンダルが発覚すれば、政権としてそれに耐える力はもはや残っていないだろう。
リスク伴う総選挙、政策も手詰まり
第二の可能性をとってみると、広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)終了後に衆院解散・総選挙があるのではないかと予想する向きもある。
サミットで議長として大国の首脳と相まみえ、送り出してから総選挙に打って出るというのは、岸田氏ならずとも、総理大臣ポストにある者にとっては、魅力的なアイデアだろう。勝利すれば、政権は一気に安定性を取り戻す。
しかし、12月に行われた茨城県議選で自民党現職10人が落選したこと、12月25日の宮崎県知事選で、当選したとはいえ、自民党県連や公明党が推した候補者が苦戦し、対立候補の前知事に2万票差まで追い上げられたことなどを考えれば、解散・総選挙には大きなリスクが伴うことを覚悟すべきだろう。
政策面でも、首相が就任時に打ち出した「新しい資本主義」は、実現会議で議論されいるようだが、具体的なプランがいっこうにみえてこない。
外交面の停滞はかつてないほどだ。国交正常化50年を迎え、華々しく祝賀行事が繰り広げられるはずだった対中関係は冷却化したまま。中国公船は尖閣諸島沖で領海侵入、接続水域航行を繰り返している。
対韓関係の改善でも前進は見られず、ロシアとの北方領土問題などは、制裁に対する先方の反発もあって完全に暗礁に乗り上げている。