所得と比較した物価上昇の影響は
表2では、物価上昇によって1カ月の支出額がどれほど異なるかを「物価上昇率×1カ月の勤労世帯の平均消費金額」によって計算した。表1の結果からランキングが大きく変わり、格差も拡大した理由は、上式の1カ月の「勤労世帯の平均消費金額」の差が地域別に大きいことに影響を受けている。さて、この地域別の消費金額の違いは、地域別の「所得」の違いによっているといえる。
経済学の標準的な理論では、消費に影響をあたえる主要な要素として所得があげられる。そこで以下では、表2に示された1カ月当たりの推定負担増加額が、各地の勤労者世帯の平均可処分所得額(月額)に占める割合を算出した。
もし、表2に示された負担金額が多少高くとも、可処分所得が高ければ、世帯によっての痛みは大きくないと言えよう。逆に、金額では負担額が少なくとも、もともとの可処分所得が小さければ、世帯にとっての痛みは大きいであろう。この結果は表3に示されている。
表3には、「家計調査」における2人以上の世帯での可処分所得が示されている。収入は世帯であるため夫婦合算の収入であり、かつ勤労収入以外の給付金等の収入も含まれている。ここから、税と社会保険料負担等を差し引いたものが可処分所得である。
また、集計対象の世帯の平均年齢が50歳前後であるため、可処分所得はやや多めになっている。そこで、ここでは絶対額よりも地域的な可処分所得の相対的な違いを見てほしい。この可処分所得で、物価上昇負担増分を割ることによって、実質的な物価上昇の痛みを比較することができる。
表3の物価上昇による負担増の可処分所得に対する比(A/B)の結果を見ると、第1位が鳥取市で、最後が高知市となっており、一見、表2の結果と変わらないように思われる。しかし、それ以外の都市のランキングはかなり移動している。
表3の高知市のすぐ上位である第51位の大津市は、表2では第33位で中位の負担であったが、この所得対比では負担はかなり低位になっている。逆に、表2では第51位の低位な負担であった那覇市は、表3では第33位と中位の負担にランクされている。