2024年11月24日(日)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年4月18日

 下の表をご覧ください。2017年~21年の5年間のサバ類の漁獲量データです。マサバが86%、ゴマサバが14%となっています。また太平洋と日本海~東シナ海の漁獲比率は太平洋が69%で他が31%となっています。つまり、サバの漁獲は太平洋のマサバが多く(データでは62%)を占めていることがわかります。

(出所)水産研究教育機構のデータを基に筆者作成 写真を拡大

 両者の品質評価は、旬の時期に脂が良くのり、身質がしっかりしているマサバ評価の方が上です。塩サバやシメサバの原料としても、マサバが好まれています。

サバ輸入の歴史

 1970年代に太平洋のマサバ漁は、77~79年の3年間では、100万トンを超えていました。

 ノルウェー、欧州連合(EU)、アイスランドなどが大西洋で漁獲したサバの漁獲量の合計は、2012~21年の平均漁獲量で約100万トン。日本だけで、かつ太平洋だけで100万トンという漁獲量がいかに多かったかがわかります。

 ただし獲り放題での大漁が続くはずはなく、資源量が減り、漁獲量は大幅に減少。1990年には、太平洋でのサバ不漁が顕著になりました。そこで原料不足を補うべく脚光を浴びたのがノルウェーサバでした。

 当時は国産サバの方がノルウェーサバより上と認識されていました。もともと、サバは大量に漁獲される魚であり、価格が安くサバを輸入するなど考えにくいことでした。

 ノルウェーサバといえば、市場では脂が強すぎるというイメージ。ノルウェーサバの市場といえば、日本かアフリカ、丸のままフィッシュミール(非食用向け)にも回っていました。

 その後、日本をはじめ、ロシア・東欧市場、欧州向けなどの市場も広がって行き、非食用はなくなって行き、ほぼ100%が食用に回るようになりました。かつ市場の広がりで買い付け競争が激しくなり価格も上昇。

 ノルウェーは漁船ごとに漁獲を決めることで、日本と異なりサバの幼魚は狙わず、かつ秋から冬にかけて脂がのる時期に漁獲を集中することで、市場評価を高めて行ったのです。輸出価格からマーケティング費用を徴収し、その資金で日本を含めた主要市場に拠点を置き、プロモーションを行うやり方は、水産物輸出のお手本となるやり方といえます。

サバ漁獲の歴史

 下のグラフをご覧下さい。ノルウェー・EUなどの各国の大西洋全体のサバ漁獲量合計と日本単独(マサバ・ゴマサバと全海域込み)のサバ漁獲量の推移です。資源管理により資源が安定している大西洋と、ジャミ・ローソクといったサバの幼魚まで容赦なく獲ってしまう仕組みの違いにより、漁獲量及び資源量に大きな違いが出ています。

(出所)国際海洋探査委員会(ICES)及び農林水産省データを基に筆者作成 写真を拡大

 大西洋では、3歳未満のサバの幼魚を漁獲することは、漁獲枠と個別割当制度(IQ・ITQ・IVQなど)が機能しているため、まずありません。このため海には産卵親魚というサバの成魚が潤沢にいて、毎年卵を産み続けています。

 日本のように親になる前の幼魚を獲ってしまえば「成長乱獲」が起きてしまい、次世代のためのサバ資源が危機的になっていきます。

 1970~80年代にかけて太平洋でのマサバ漁は全盛期を迎えました。九州からもサバの船団が集結し、主要水揚げ地である千葉県の銚子をはじめ、港は非常に賑わっていたと聞きます。

 しかしながら、科学的根拠に基づかない漁業は、やがて衰退に向かって行きます。サバが獲れなくなると小さなサバにも高い漁獲圧力が加わり、資源にとっての悪循環が始まりました。


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