サンマも調査結果通りに漁獲できず
2022年のサンマの漁獲量は、漁獲枠15万5000トンに対して、過去最低を更新する1万8000トンでした。下のグラフでは、2021年に比べて2倍強・資源量が多いという予測でした。しかしながら漁獲枠は実際の漁獲量とかけ離れており、これでは漁獲枠による資源管理の機能は全く働いていません。
さらにいえば、今期(23年度)の漁獲枠も10万トンとなっています。昨年(22年)の漁獲量の5倍以上に設定されており、資源の減少が深刻化している中、これでは資源状態は悪化の一途です。本心では誰も効果があると思っていない、形式的な枠の削減や漁業管理の先に待っていることは何でしょうか?
資源が一時的に増えても潰してしまう仕組み
下のグラフは北海道周辺におけるニシンの漁獲量推移を示しています。ニシンに限らず、水産資源は環境や規制などの影響で一時的に増えることがあります。これを卓越級群と呼びます。この貴重な資源を増やしていけば資源回復に大きく繋がります。
上のグラフで1980年半ばに突出して漁獲量が増えた年があります。しかしながらニシンには漁獲枠がなく、沖底(沖合底引き漁業)が大量に漁獲数量を伸ばし、翌年以降は再び減少してしまったことが読み取れます。
これは、沖底が獲りすぎたのが問題の本質ではなく、それを止める資源管理の仕組みがないことにあります。
資源評価に予防的アプローチを入れて慎重に評価する。卓越級群が発生した際にそれを潰してしまわない仕組みを作る。そのためには、科学的根拠に基づく水産資源管理を進めることです。
国は「国際的に見て遜色がない資源管理」進めようとしています。数量管理・個別割当制度(IQなど)が改正漁業法に基づいて適用されることに際し、将来のことを考えこれを推進していくことが何よりも重要なのです。
四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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