2024年12月8日(日)

Wedge REPORT

2023年5月23日

 5年間で1兆円─。2022年10月、岸田文雄首相が臨時国会の所信表明演説でリスキリングなどによる人への投資を大幅に拡充することを示し、「リスキリングブーム」という様相を呈している。

従業員の講座受講や資格取得が実務につながるかは企業のビジョン次第だ(MAPO/GETTYIMAGES)

 リスキリングを推進する経済産業省は「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義している。趣味での学びとは違い、職業や業務に紐づくのが特徴であり、企業が主導して従業員のスキルの習得や向上に取り組むことが求められる。

 雇用者の企業内リスキリングにも力を入れる厚生労働省は昨年12月、「人材開発支援助成金」に「事業展開等リスキリング支援コース」を増設した。これは新規事業の立ち上げに伴う人材育成やデジタル・グリーン化に対応する人材育成に取り組む企業への助成金制度だが、同省企業内人材開発支援室室長補佐の北里尚寿氏は「これまでに提出された育成計画書の大半はデジタルに関連している」という。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)時代ともいわれる昨今、デジタル分野のスキル向上や学び直しがリスキリングの本丸といえる。多くの企業で叫ばれて久しいデジタル人材の不足を解消することにもなるからだ。

 日本総合研究所調査部の安井洋輔主任研究員は「日本ではシステム開発などのデジタル関連業務をベンダー企業に外注する傾向があり、デジタル人材は情報通信業に偏在している。だが、生産性向上とデジタル化が不可分である今、あらゆる業界、企業でデジタルを踏まえた経営戦略を考える必要があり、もはや文系だからというのは言い訳にならない」と指摘する。

 とはいえ、リスキリングは言うは易く行うは難しである。どのように進めるべきか悩む経営者や人事担当者も多いのではないか。試行錯誤しながら〝自前で〟リスキリングに取り組む企業の動きからその要諦を探った。


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