2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年7月3日

 インドの有力国際政治学者のブラーマ・チェラニーが、6月14日付の非営利の言論サイト「プロジェクト・シンジケート」に、予定されているモディの訪米を念頭に、米印関係の緊密化の背景や現状、限界について論じている。

2023年6月22日、米国ワシントンのホワイトハウスでの公式晩餐会で乾杯するジョー・バイデン米国大統領とインドのナレンドラ・モディ首相(写真:ロイター/アフロ)

 過去20年間で、米印関係ほど急速に強化された二国間関係はない。実際、モディの訪米は、首相として8回目、バイデン米大統領就任以来2回目であり、米印両国は、この親密な関係から得るものが多い。インドは人口で中国を抜いたばかりで、経済規模では及ばないが成長スピードはより速い。国内総生産(GDP)はすでに英国を上回り、ドイツを追い越す勢いだ。インドは米国にとって、武器を含めた主要な輸出市場となっている。

 地政学的な競争が激化し、中国の影響力が増大する中、インドは米国にとって明らかなパートナーである。インドは、インド太平洋の平和と安定を維持する上で不可欠な存在だ。オースティン国防長官とサリバン国家安全保障補佐官が今月ニューデリーを訪問したことは、それを物語る。

 すでにインドは、多くの軍事演習を米国と行い、米国が同盟国と維持している「基礎的」協定4つ全てに署名している。これは、両国が互いの軍事施設に相互アクセスし、航空機や衛星による地理空間データを共有することを意味する。

 インドと米国、豪州、日本の参加する枠組み「Quad(クアッド)」は戦略的に重要で、インドと戦略的関係を強化することは、米国の超党派のコンセンサスを得ている。

 しかし、難しい面もある。インドは、多極主義をとり、民主主義国との連携を深めながら、ロシアとの伝統的な緊密関係も維持してきた。インドは、米国とは有人宇宙飛行から半導体のサプライチェーン構築まで幅広く連携しているが、ロシアとは防衛とエネルギーにほぼ限定されている。しかし、インドは欧米のようにロシアを突き放す気はなく、ロシアを中国に対する価値ある対抗勢力と見ている。

 結局、米印関係は、条約に基づく伝統的な同盟とはなれなくても、米国が追求するソフトな同盟は、双方に利益をもたらすだろう。米国とインドは戦略的利益を共有し、強制されないルールベースのインド太平洋を維持することでも一致している。

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 この論説は、6月22日からのモディの訪米により注目を浴びることになる緊密化する米印関係の背景、現状、制約などを分かりやすくまとめている。結論としては、独立した大国を目指すインドは、米国と完全な同盟国にはなれないが、戦略的利益を共有する限りソフトな同盟関係として両国に様々な利益をもたらすということで、これは恐らくモディ自身の考えでもあろう。

 モディ首相は、6月21日国連本部で「国連ヨガの日」を祝い、22日から米国を国賓訪問し、首脳会談、国賓晩餐会とともに両院の合同会議で演説を行った。

 この訪問は、米国にとりインドとの関係を強化する歴史的な訪問となる可能性がある。防衛協力から強靭なサプライチェーンの構築、技術移転、宇宙開発協力、教育などに至るまで幅広い協力イニシアティブが発表される。また、共通の脅威である中国に対しては、名指しはしないものの、民主主義や法の支配、武力による現状変更への反対など強いメッセージを出すことを米国は求めるであろう。


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