2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年9月4日

 上記論説でトランは、G7にBRICSとの対話を促す。またBRICSを「時代の要請」と言い、「世界はそれと対話する準備をしておくべきだ」だと言う。それはいささかBRICSの過大評価ではないだろうか。その将来は未だ分からない。それを主導するのは中国であり、同国はBRICSを拡大し、G7との対抗の場にしたい。このような二分法的な手法は有益ではない。更に他のグローバルサウスがそれを受け入れるとは限らない。西側諸国は、当面注意深く静観すべきだろう。

 途上国との対話は、G20でやることが最も現実的だ。その間、西側はインド、ブラジル、南アフリカなどと個別の対話を強めるべきだろう。例えば、今年の広島G7サミットでは、インドとブラジルの首脳が招待された。

BRICS内で圧倒的すぎる中国の存在感

 途上国がBRICSに接近することは容易に想像できる。第一に、今、力のありそうな途上国側の場は他に見当たらない。民主的価値といったうるさいこともない。今や世界はグルーピングの時代でもある。第二に、中国の経済力の利益にあずかりたい。エネルギーや食糧ではロシアも利益配分能力がある。権威国家は決断も早い。第三に、国際経済政治でヘッジを掛けておきたいということであろう。それは、価値よりも実利、便宜で結ばれている。加盟申請国は、サウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、アルゼンチン、インドネシア、エジプト、エチオピアなど23カ国との報道もあり、このうち今回は、インドネシアを除く上記6カ国が来年から加盟することが決定した。

 英フィナンシャル・タイムズ紙のビーティは、「BRICSの国々が中国の衛星国になるリスク」と題する論評(7月27日付)を書き、BRICS内での中国の経済力は圧倒的であり、それは非常に「バランスを欠く」グループであるとした上で、「もし中国がBRICSの非同盟主義を放棄し、中国主導のクラブにすることを強要すれば、グループ内の摩擦は激しくなるだろう」、「BRICSは政治連合として発展してきた。レトリックや野心ではその通りだ。しかし内部分裂と不均衡な現実は今後大きな問題となる」と主張する。この見方は、より傾聴に値しよう。

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