そのような傾向は、米中露といった大国が圧倒的なシェアを占めてきた武器取引にも反映されている。例えば、インドネシア、インド、ブラジルは、米国製やロシア製の戦闘機の購入を検討した後、フランス製の戦闘機を採用している。グローバルサウスで、フランス製が伸びるのには、米露の対立と距離を置くことも考慮されたものと考えられる。
そういった動きには、グローバルサウス同士の協力の側面も出ている。最近の東南アジアとインドの接近は、見逃せない動きだ。
例えば、フィリピンは、前のドゥテルテ政権の末期、インドからブラモス超音速巡航ミサイルを購入することを決めた。これは、これまで米国製の武器ばかり買ってきたフィリピンにとって、米国とは別の選択肢として、インド製を採用した一例である。
ベトナム、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイなどの各国も、インドからの武器購入、武器の訓練・整備などに積極的に取り組んでいる。このようなインドの東南アジアへの関与の増大は、インド側から見ると、中国への対抗の側面を持っているものだ。だが東南アジア諸国の中には、中国だけではなく、米国とも距離をおくために、インドという選択肢を利用する国がでてきているのだ。
日本にとっての示唆
グローバルサウス対策は、日本にとっても要だ。日本と中国は、グローバルサウスで影響力争いをしてきた。今、それは米中対立の一部として、米中対立の勝敗を決める重要な部分を占める。日本としても、米国陣営の一員として、協力すべき分野である。
しかも、日本には、米国にはない強みがある。そもそも日本は、アジアに位置し、アジア諸国と深い付き合いをしてきた。だから、東南アジアにおいて中国だけでなく、米国の人気も落ちた時も、日本の人気は上がるのだ。
日本は、米国とグローバルサウスの橋渡し役になれるし、そうなるべきだろう。それは米中対立における米国の勝利と、米国陣営における日本の地位向上につながるだろう。
同時に、日本は、グローバルサウスの中で台頭する国々との、対等な協力を模索する必要があるだろう。特にインドが、グローバルサウス同士の協力を模索し、そのリーダー格として名乗りを上げ始めている。インドもまた、中国との影響力競争の中で、グローバルサウス対策に着目しているのだ。
日本とインドが協力するグローバルサウス対策を、東南アジア、南アジア、中央アジア、アフリカなどでより積極的に展開し、グローバルサウスと西側諸国の橋渡しになるように展開することが、米中対立の中で、日本外交に求められる役割になるだろう。