そこで中国自身も、一帯一路におけるいくつかの成功例を強調しつつ、選択と集中による「高品質な発展」を目指すと表明する一方、港湾・空港建設が財政破綻をきたしたスリランカの事例のように、問題のある国との一帯一路協力はなるべく強調しないようになった。また、イタリアの一帯一路離脱の動きに象徴されるように、総じて一帯一路を介した中国からの輸出が中国の輸入を大きく上回る現象が一般化し、個別の参加国レベルでは一帯一路参加の経済的メリットを見込めない状況が現れている。
さらに国際関係における中国の立場そのものが、一帯一路インフラを利用してきた顧客の選好に大きな影響を与えた。一帯一路を象徴する、中国と欧州を結ぶ定期貨物列車「中欧班列」は、ウクライナを侵略するロシアを回避する動きが広がって利用減が続き、日本海事センターがまとめた今年8月のアジア発海上コンテナ輸送量は、前年比6%増を記録した(日本経済新聞、10月26日)。
そこで中国はカザフスタンとともに、カスピ海を横断する鉄道連絡船ルートを整備することで、ロシアを避ける顧客を繋ぎ止めようとしているが、そもそも中国がロシアのウクライナ侵略を事実上容認し、資源輸入などでロシアの戦費獲得を支えていることに問題があると言えよう。
中国がサミットで進めた仲間探し
だからこそ中国はなおさら米国や西側に対して、中国の経済的沈滞を引き起こし、中国をめぐる悪いイメージを流布していると厳しく糾弾し、日本に対しては「米国の先兵とならず中国を正面から積極的に見て協力せよ」と上から教え諭すような態度をとり続けている。
王毅外相は今回の一帯一路サミットに先立つ9月26日の「人類運命共同体白書」発表会の場で、現代世界における諸悪の根源は、冷戦思考の残滓と地政学的な競争関係であると主張し、西側諸国が価値観の違いを政治の道具や対抗の武器として、民主と権威主義の二項対立をつくり出し、自己の価値観やモデルを他人に押し付けることに断固反対すべきで、デカップリング・「小圏子(小さな排他的サークル)」づくり・保護主義・一方的な制裁を即座にやめよと要求した。
こうして、第三回一帯一路サミットの場はおしなべて、中国の西側諸国に対する態度に表向き反対せず、「一つの中国」政策堅持を表明し、かつ「人類運命共同体」の一員として参加することにやぶさかでない国々を中国が認証する場となった。逆に言えば、中国にとって煩わしい価値観や規範に基づいて行動し、それを中国にも順守するよう望む国は、経済的利益の薄さや、中国・ロシアなど強権国家どうしの関係に手を貸す憂慮から、自ずと一帯一路に対して消極的なオブザーバーとならざるを得ない。
一帯一路かEUか
そして今、中国と密接な一帯一路協力関係を続けているはずの国であっても、徐々に別の秩序や規範との間での選択を迫られているかのような雰囲気がある。その具体例として、セルビアとハンガリーをめぐる動きを見てみたい。