また、空間としての居心地の良さを強調するべく、中国メーカーは椅子やダッシュボード周りなどの内装に力を入れている点も印象的だ。
「トヨタは頑丈だし良いメーカーだと思うけど、内装がチープすぎるよ」
今夏、北京市で配車アプリを使ったら、トヨタのEV「bZ4X」がやってきた。聞くと、半年ほど前にガソリン車から乗り換えたばかりだという。移動中、あれこれヒアリングさせてもらったのだが、bZ4Xの欠点について聞くと、航続距離や充電性能には満足しているけど唯一気に入らない点だとして内装をあげていた。
圧倒的なランニングコスト
そして、彼がEVに乗り換えた理由を聞くと、こう帰ってきた。
「今買うならEVしかないね。燃費(電気代)がガソリン車の20%ぐらいだから」
他にも多くのEVユーザーに話を聞いたが、ほとんどの人が運用コストの安さを一番の理由としていた。1000万円近い、高級価格帯の車を販売しているディーラーまでもが燃費の良さを推してきたのはちょっと不思議でもあった。
電気代が安いといってもそれは自宅で充電した場合のことで、マンションの駐車場に充電設備がない、あっても数少ない充電設備の奪い合いになるのではないか。外の充電ステーションも満車で使えないことはありうる。行楽シーズンになると数時間の充電待ちに苦しんだ話がよく報じられている。冬になると航続距離が激減して充電を繰り返さないと行けないのでは……。
前述のbZ4Xオーナーにこうした疑問もぶつけてみたのだが、「別にそんなことはない」というあっさりした答えが返ってきた。「充電ステーションは山ほどあるから、満車ならほかのところを探せばいい。だいたい空いている。今のところ補助金があるから充電ステーションでも激安。夜は駐車場代わりにずっと車を止めているし、昼間に電気がなくなっても30分充電すれば200キロメートルぐらい走るからちょっとお茶でも飲んでいればいいだけの話。冬になると確かに航続距離は半分ぐらいになるけど、別に普段使いには困らない」のだという。
冒頭で豊田会長の発言を紹介したが、その内容はつまるところインフラ整備が伴わないとEVはしんどいというものである。その点を見ると、中国はごりごりとインフラ整備を推し進めることによってこの壁を越えたと言えるのではないか。
充電ステーションの数も猛烈に増え続けているほか、自宅充電設備の設置も急ペースだ。EVメーカーは充電設備を無料プレゼントという購入特典をつけているケースが多い。マンションの場合、管理企業が難色を示すこともあったが、政府がEV充電設備設置を妨げてはならないと通達するなど、トップダウンで強行突破している。