2024年5月10日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年1月15日

必要とされる予算の再配分

 漁業者の収入を増加させ、漁業を成長産業にするには、科学的な資源管理のもとに資源を持続的可能な形で利用し、減少した資源は回復を図る必要がある。そのためには、資源管理の基盤となる調査を充実させる必要がある。60億円弱では少なすぎると言わざるを得ない。水産改革を機に数百億円予算を増額しているのであるから、少なくともその半分程度は資源管理予算に回すべきではないのか。

 漁業者に対する補助金についても再検討が必要である。特に問題なのは公共事業とともに予算が膨張している漁業者に対する減収補填プログラムである。この事業では減収補填を受ける前提として、国・都道府県が作成する「資源管理指針」に基づき、漁業者(団体)が自ら取り組む資源管理措置について記載した「資源管理計画」を作成し、これを確実に実施することが前提となっている。

 確かに資源管理に真面目に取り組んだ結果として減収が発生したのであるならば、このプログラムに基づいて補填を図るのは趣旨に適っているが、問題は「資源管理計画」が一般には公表されておらず、果たしてそれが実効的であるのかが全く外から見えず、相当な割合の「資源管理計画」が形骸化し資源管理にはほぼ無意味なものとなってているおそれがある点である。本年度から「資源管理計画」は、全て公開が前提とされている「資源管理協定」に移行することが予定されている。予定通り移行を図るとともに、資源保護に関して明らかに不十分あるいは形骸化している内容の資源管理協定は改善を図る必要があろう。

 岸田文雄首相は「聞く力」を自らのアピールポイントとしているようであるが、少なくとも水産予算から伺えるのは、現政権の予算面での聞く先は、一部の業界団体に偏ったものとなっているに過ぎないという点である。

 わが国周辺の水産資源はわれわれの共有財産であり、一部の漁業者のものでもなければ、業界団体のものでもない。ましてや予算はわれわれ国民の税金から成り立っている。水産資源にかかわるすべてのステークホルダーに対する「聞く耳」を持った、持続可能な資源管理が水産予算を通じて図られるべきであろう。

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