外部性を削減する方法を考えましょう。まず、外部性の表し方を考えます。市場経済では価格と数量は需要と供給が一致する点で決まります。図-1の需要曲線と供給曲線の交点Eです。
均衡価格と呼ぶこの価格より高い値段を出しても良いと考えていた消費者は均衡価格との差を満足感として得ます。図の三角形PEBが全消費者の満足感を表し消費者余剰と呼ばれます。
一方生産者のコストは供給曲線に沿い上昇すると考えられ、生産者は、三角形DEPの利益、生産者余剰を得ることができます。消費者余剰と生産者余剰を合わせた三角形DEBが社会全体の利益、社会的厚生になります。
外部不経済がある時には、社会には損失が生じます。たとえば、ガソリンの販売数量と価格がE点で決まったとします。一方、ガソリンの消費によりCO2が排出され温暖化を促進し社会は損失を被ります。
ガソリンの消費がもたらす温暖化の被害を含めた社会的費用は社会的限界費用曲線で表され、外部不経済の大きさは四角形DECAで示されます。
有効な政策は?
温暖化問題の解決にはCO2の排出量をゼロにする、すなわちガソリンの販売を止めれば良いのですが、車を運転する人は困ります。
市場に任せれば生産が過剰になるので市場の失敗ですが、問題を解決する最適な生産量はどこになるのでしょうか。社会全体が受け取る利益が最大になる点です。
図-1で生産数量と価格の交点がE’点に移動すれば、外部不経済の大きさを差し引いても社会的厚生は最大になることが図形の大きさから分かります。生産数量をEからE’に移動させる方法はいくつかあります。
ひとつは、規制です。ガソリンの生産数量をE’にします。工場の排水であれば、排水の規制を行うことは可能ですが、市場経済で生産割当を行うことはできません。
環境税を導入し、価格を意図的に上昇させ、販売数量を減少させる手法も可能です。ただし、価格に対し需要がどのように反応するかは商品により異なります。生活必需品では、価格が上昇しても需要はあまり減少しません。必要な量のCO2を削減する税額はいくらなのか、割り出すことが難しいかもしれません。
排出権取引はCO2を直接削減し、外部不経済を減少させる手法ですが、当局が、現在の排出量、経済情勢などを基に排出事業者に排出可能な量の割り当てを行いますので、必ずしも社会にとりもっとも良いレベルが最初から達成されるわけではありません。