これまでは、米国が挑戦をすべて一人で解決し、その為に必要なコストの分担を同盟国・同志国に求める、という「バーデン・シェアリング」の時代だったが、現在は、コスト共有は当然として、挑戦の解決自体に同盟国・同志国が関与し、責任を分担しなければ紛争は解決しない。しかし今は、欧州もアジアの同盟国もその現実に向き合い、必要な責任分担をするだけの準備ができておらず、いずれ米国がやるだろうという甘えがある「中途半端」な「過渡期」だ。
だからこそ、これだけ人命が毎日失われているのに、だれも紛争解決の責任を取ろうとしない。この状況で、責任の分担を通じてウクライナ戦争を止めることができるかどうかが、われわれが新たな時代に対応できるかどうかの試金石になる。
ミャンマーに対しできること
それでは、このことは、ミャンマー問題との関係では何を意味するのか。それは、当事者である東南アジア諸国(ASEAN)が、もう少し主体的に努力することが必要だということだ。まずは、ASEANが自身のミャンマー問題特別代表を早急に指名することが必須だ。
既に軍事政権に要求する内容は、ASEAN5項目提案にまとめられているのだから、やるべきは、その実現に期限を設けるために、誰かが責任をもって集中的に交渉することであり、ASEAN特別代表は、それを主導すべきだ。ただ、やはりそれだけでは重みに欠けるし、「チャレンジ・シェアリング」には不十分だ。
そこで必要となって来るのが上記の論説も指摘する米国の特別調整官である。そして、同様のミャンマー問題担当者を重要なステークホールダー、即ち日本、中国、欧州連合(EU)の全てが指名すべきだろう。この5人の特別代表が軍事政権と集中的に交渉を繰り返すのが、あるべき「チャレンジ・シェアリング」時代の対応にふさわしいのではないだろうか。