太平洋のマサバ資源はなぜ一時的に回復したのか?
下のグラフは、マサバ(太平洋系群)の漁獲量推移を示しています。70年代には実に年間100万トン以上が漁獲されていました。
しかしながら、主に獲り過ぎて資源量が激減。90年(青〇)にはほとんど獲れなくなってしまいました。そこでノルウェーサバの輸入が本格的に始まりました。
ところで、グラフをよくみると93年、04年など何度か漁獲量が急回復していた形跡があることがわかります。しかしながら、資源管理が機能しておらず「成長乱獲」を起こしており(下のグラフ参照)、数年で再び獲れなくなるという繰り返しです。
そして赤〇が近年の状況ですが、13年から東日本大震災の影響で漁獲圧が下がり増加に転じたものの、再び減少が始まっています。このメカニズムがなぜ起こるかについて、具体的に解説します。そこには、報道されない「資源管理の失敗」が隠れているのです。
下のグラフは、マサバの年齢ごとの漁獲尾数を示しています。ここに、ノルウェーでは漁獲されないサバの未成魚の乱獲「成長乱獲」による資源の減少が隠れています。
グラフは白がゼロ歳、黄色が1歳、青が2歳、緑が3歳、オレンジが4歳、水色が5歳となっています。よく見ていただくと傾向がわかります。
大不漁となった青〇の90年以降93年には漁獲量が一時的に増えています。しかしながら白の0歳魚が翌年に黄色の1歳魚となるものの、2歳になる前にほとんど漁獲されてしまっていることがわかります。漁獲を逃れて何とか残っている2歳・3歳以上の親のサバが産卵して何とか資源を維持しているという、非常に厳しい資源構造となっていることがわかります。
例外的だったのが赤〇です。11年に東日本大震災の影響で、放射性物質の問題が発生しました。このためマサバの産卵期の4~6月にはほとんど漁が行われず、サバに産卵する機会が与えられたのでした。
そして、その時生まれた卵が13年に親となり、その親となったサバが産卵をして命をつないだのです。生まれた卵が生き残りやすい環境だったことも考えられ13年に生まれたサバが「卓越級群(特に個体数が多かった年齢群)」となって、サバ(太平洋系群)の資源が一時的に回復していたのです。