「それでもマサバはいる」という最後の根拠として残っていたのが、「沖合・公海上にいる」でした。23年度のマサバ(太平洋)の漁獲量は、日本とロシアの漁獲量は激減していたものの、公海上で漁獲していた中国漁船の漁獲量は約11万トンと22年並みであったからでした。
筆者はこの理論も「疑わしい」と考えていました。なぜなら日本の排他的経済水域(EEZ)内(日本とロシアが漁獲)が不漁でその資源が公海上にいるのであれば、中国漁船の漁獲量は、前年並みどころか増えるはずだからです。
また、マサバの主要産卵場はサンマのように公海上を含めた広範囲ではなく、日本の太平洋側のEEZ内です。仮に産卵場自体や回遊パターン自体が変わっていたら、マサバも国際資源の扱いとなりかねず大変なことになります。
しかし、24年4月に行われた北太平洋漁業委員会(NPFC)の漁獲データを見ると、やはりそうではありませんでした。公海上の中国漁船のサバの漁獲量も22年の11万トンに比べ、23年は5万トン55%減と大幅に減少していました。日本は11万トンで同34%減、ロシアは1.5万トンと69%減でした。
つまり、サバは深いところにたくさんいたわけではなく、沖合にたくさんいたわけでもありませんでした。単に資源管理の不備で大きく減少してしまっていたに過ぎなかったのです。
日本海側のサバ資源を大切にする重要性
日本のサバ(太平洋系群)の水揚げは深刻な状況なのですが、一方で日本海や東シナ海側(対馬暖流系群)のサバ漁は豊漁などと報道されています。これはどういうことなのでしょうか? 太平洋が獲れなくなっても、国産サバの供給は大丈夫なのでしょうか? 答えは「No!」です。
サバの漁獲枠は太平洋系群と対馬暖流系群に分かれています。太平洋の枠は余っていますが、後者は枠がタイトになっています。
ここで、漁業者側はサバがいるのでもっと獲らせて欲しいとなりがちです。しかしながら、こうやって枠がなくなればそこで漁獲が終了するパターンであるべきなのです。この状態は、サバで大きく成功しているノルウェーをはじめ、大西洋側では「当たり前」なのです
大西洋側では漁獲量にタイトな制限があるので、3歳未満の価値が低いサバの未成魚を狙うことなどありません。漁獲量が多いといっても上のグラフを見れば実態がわかります。漁獲しているサバの年齢は2歳未満の「ローソクサバ」と呼ばれるサバの未成魚主体なのが大きな問題です。
これまでは、枠が緩かったために獲り放題でした。それが、枠がタイトになったことで、サバの未成魚は成長する機会を得ることになります。そして親になって産卵し、資源の回復に貢献していくのです。
せっかく機能し始めた資源管理を守ってほしいところです。そのためには社会の理解が不可欠です。少しでも世の中に伝わるようにYoutube「おさかな研究所」でも詳しく解説をしております。