2024年7月14日(日)

日本の医療〝変革〟最前線

2024年5月31日

 そのサ高住に入居した高齢者が、訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスを利用するのでサービス量の増加に拍車がかかる。「入居者の介護サービスが介護保険の利用限度額に近いケアプランとなっているのでは」という批判を受けたこともある。「囲い込み」と指摘され、国の審議会でも取り上げられた。

 一方、特別に安い家賃の部屋を設けて生活保護受給者や低所得者が入居できる態勢を整えているサ高住の事業者も少なくない。ホームレス対策、として評価する声もある。

 増加するサ高住について地元自治体は「制度上は問題がない」「市民が必要だから介護サービスを活用している」と、「囲い込み」論には静観の構えだ。

注目すべき岩手県西和賀町の存在と取り組み

 介護保険料の上位ランク第4位に岩手県西和賀町が顔を出していることに注目したい。同町は05年に沢内村と湯田町が合併した人口4700人の小さな自治体だ。保険料が高額になった理由を独居高齢者の増加やその高齢化に伴う認定率の高さ(24・8%)を挙げるが、見逃してならないのが介護サービスの充実ぶりだ。

 2つの特養で定員は102人、81人定員の老人保健施設、2つのグループホームで定員は18人と入居施設が並ぶ。その上在宅サービスの小規模多機能型居宅介護(小多機)が3カ所もある。

 訪問や通いを組み合わせた小多機は在宅サービスの主役とされるが、全国的には普及率は高くない。その中で3カ所もの開設は高く評価していいだろう。

 サ高住はなく、住宅型有料老人ホームは7部屋の民家型で小さい。介護保険の住宅や施設、それに在宅サービスを十分に揃えて高齢化に対処している。

 この4月の高齢化率は53.3%に及んでおり、住民の半数以上が高齢者だ。

 実は、合併前にあった沢内村は、日本の医療保険制度の歴史に欠かせない自治体として有名だ。1960年に65歳以上の高齢者の医療費を無料にした。国や岩手県が「国民健康保険法の違反になる」と指摘したが、構わず実現させた。

 診療時の自己負担があるため通院できない住民を目にした当時の村長の英断で、大きな反響を呼んだ。「命の格差は絶対に許さない」との考え方だった。その後、東京都の美濃部亮吉知事や大阪府の黒田了一知事が追随。国も無視できず、1973年には田中角栄首相が70歳以上の高齢者への無料化を始めた。

 併せて沢内村では、村民の「個人健康台帳」や「成人健康手帳」を作って検診や保健サービスを記録したり、住民を「保健委員」にするなど健康管理に力を入れた。この保健医療一体型の取組みが、医療費無料化による「過剰受診」を防ぎ、医療費の低減につながる。現在の地域包括ケアの先駆例とも言えそうだ。

 当時から60年以上経つが往時の考え方を踏襲、西和賀町では高齢者の通院時に月1500円以上の医療を無料としている。入院時は月5000円以上からだ。

 介護保険制度は地方分権の試金石と言われた。保険料の決定法は、自治体がその主導権を発揮できる格好のテーマである。高齢者に不安のない十分な介護サービスが供給されているかが、保険料の在り方で良く分かる。「高額」の中身を吟味すべきだろう。

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