2024年9月29日(日)

World Energy Watch

2024年6月6日

 石炭輸入額の場合も、21年1月の9000万円から22年8月に約6倍の5.3億円に増え、24年4月は2.5億円となった。政府・日銀が円安是正に向けて本腰を入れてないことから、輸入物価による発電用燃料のコスト高はこの先も続く見通しである。

 一方、これまで電力補助金には大規模予算が投入されてきた点から、無期限に延長することは困難である。電気・ガス価格激変緩和対策事業には、22年度補正予算で約3.1兆円、23年度補正予算額でも約6400億円が注ぎ込まれた。同時期、ガソリン補助金(燃料油価格激変緩和補助金)にも6.3兆円以上が費やされたことから、財政的な観点から、各種補助金の終了に向けた出口戦略が模索されてきた。

福島原発事故以降の電力供給体制

 現在の電力供給体制は、ガス火力発電の比率が高いこともあり、資源価格の変動や円安の進行から影響を受けやすい。日本のエネルギー政策にとって大きな転換点となったのは、11年3月に起きた東京電力福島第一原発事故である。同事故を受け、原発の安全性に対する疑念が国民の間で強まった。

 そして事故の教訓を踏まえ、原発の稼働には、原子力規制委員会が定めた新しい基準を満たすことが必要となり、全ての原子炉が運転の取り止めを余儀なくされた。事故前年の10年、日本の原子力発電規模は米国やフランスに次いで世界第3位であり、原子炉54基が稼働し、15基が建設中・計画中であった。

 だが全炉停止の影響により、発電比率に占める原子力発電の割合は10年度の25%から、11年度以降は10%以下まで落ち込んだ。その結果、石炭火力発電(34%)とガス火力発電(31%)の重要性が高まった。


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