2024年11月23日(土)

World Energy Watch

2024年6月6日

 運転期間の制限は原則40年であるが、原子力規制委員会の承認の下、最長20年延長できる規定が23年に導入された。しかし、廃炉問題を先送りしたに過ぎず、いずれかの段階で運転の停止を決断せざるを得ないだろう。

クリーンエネルギーとしての原発の活用

 脱炭素化に向けた流れを受け、エネルギーの安定供給に加え、カーボンニュートラルの手段としても、原発を積極的に導入しようとする国が増えている。再エネと同様に、温室効果ガスの大半を占める二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力発電の活路が脱炭素分野で見出された。

 政府は23年2月に閣議決定した「グリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けた基本方針」において、原子力の活用を明記した。第6次エネルギー基本計画に沿って、30年度までに電源構成に占める原子力比率を、20~22%に引き上げる方針である。

 また政府は安全性の確保を大前提に、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化させていく構えだ。原子炉の新設事業については、大間原発(ABWR、138.3万kW)や東通原発2号機(ABWR、138.5万kW)、島根原発3号機(ABWR、137.3万kW)が建設中である。 

 原発の新設計画に関する議論は中長期的な観点から、原子力発電を将来的に維持していく上で重要である一方、迫りくる電気料金の上昇を可能な限り抑えるためにも大切である。原発の新設を目指す他国とは異なり、日本は既に国内に備わっている原子力エネルギーの供給能力を活用できる状況にある。

 原発の再稼働を急がなければいけない背景には、主力電源の石炭火力に対する風当たりが年々強まっていることもある。今年4月にイタリアで開催された主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合では、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の廃止目標年限が初めて声明に明記された。

 原発が再稼働しないまま、安価なエネルギーを提供できる石炭発電の利用が制限された場合、電力供給体制が大きく揺らぐ恐れがある。普及しつつある再エネ発電は発電量の変動や災害への脆弱性などにより、安定性に欠ける面がある。日本は原発の利点を最大限活用すべく、原子力規制委員会の判断や地元自治体の意見も踏まえつつ、政治主導で早期に原発の再稼働させる必要があるだろう。

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