2024年7月2日(火)

はじめまして、経済学

2024年6月28日

現役世代の負担増と揺らぐ年金制度

 現在、少子高齢化の進行によって、日本の年金制度の存続が大きく揺らぎつつあります。年金の受給者数や受給期間が増大する一方で、年金保険料を納める労働人口の数は減り続けており、「受給者」と「支払者」のバランスは崩れています。

 もちろん、医療制度の充実などによって平均寿命が伸びることは良いことですが、こと年金に関して言えば、支払う側である現役世代の負担は大きくなり続けています。このまま少子高齢化が進んでいくことを考えると、年金額を引き下げたり、受給開始年齢を引き上げたりなど、受給対象者の生活への影響は避けられないかもしれません。いずれにせよ、現状の年金制度を見直していかなければならないことは明らかです。

 ちなみに、2023年3月下旬、フランスで政府の年金制度改革に反対する(抗議)デモが激化しました。少子高齢化に関する問題に悩んでいるのは、日本だけでなく先進国などが抱える共通の問題だと言えます。

「マクロ経済スライド」とは何か?

 賦課方式をメインとする年金制度は、現役世代が多い時には機能していても、日本のように少子高齢化が進んだ社会では維持が難しくなります。そのため、日本では「マクロ経済スライド」という制度が設けられています。

 マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役世代の人口減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。一般に、年金の支給額は物価や賃金の変動に応じて毎年改定されていますが、その改定率から「スライド調整率」*3を差し引くことによって、年金額は調整されています。

 たとえば、2023年度の年金額は前年度の年金額を上回りましたが、3年ぶりにマクロ経済スライドによる調整が発動されたことで、実質的には目減りとなりました。

 この制度は、2004年度の年金制度改正時に導入されましたが、長期にわたるデフレの影響によって年金額の改定率もマイナス傾向が続いており、過去、実際に発動されたのは4回にとどまります。

しかし、このような仕組みを整備しておくことによって、物価上昇率ほど公的年金は増加しないように抑制されており、年金制度が破綻してしまわないように努められているのです。

*3 現役世代の減少と平均余命の伸びに応じて算出されます。


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