旧優生保護法のもとに不妊手術の強制があったことをめぐり、2024年7月、最高裁が国の賠償責任を認める判決を出した。それを受け、岸田総理大臣が裁判の原告らと面会し政府として謝罪を行った。
旧優生保護法では、親の障害が子どもに遺伝すると考えられ、障害などを理由に本人の同意がなくても強制的に不妊治療を行うことを認めていた。人類の歴史では過去にも優生学が悪用されてきたが、果たして自然界では理にかなっているのだろうか。ピュリッツァー賞、ガーディアン賞など多くの賞を受賞した医師の著書から遺伝学の歴史と教訓を学ぶ。2018年7月27日に掲載した『繰り返される優生学の悪用、遺伝子をヒトはどう管理するのか』を再掲する。
旧優生保護法では、親の障害が子どもに遺伝すると考えられ、障害などを理由に本人の同意がなくても強制的に不妊治療を行うことを認めていた。人類の歴史では過去にも優生学が悪用されてきたが、果たして自然界では理にかなっているのだろうか。ピュリッツァー賞、ガーディアン賞など多くの賞を受賞した医師の著書から遺伝学の歴史と教訓を学ぶ。2018年7月27日に掲載した『繰り返される優生学の悪用、遺伝子をヒトはどう管理するのか』を再掲する。
旧優生保護法のもと強制不妊手術をされた人たちが、相次いで国を提訴している。声を上げた人たちの勇気によって、優生学の忌まわしき過去が、日本でも掘り起こされようとしているのだ。
メンデルやダーウィンが遺伝の概念と初めて出会ったとき、のちにナチスドイツが優生学による「民族浄化」の名目で断種や強制収容、さらには殺人まで犯すことになろうとは、夢にも思わなかっただろう。
本書は、「科学の歴史上、最も強力かつ”危険”な概念のひとつである遺伝子の誕生と成長と未来についての物語」である。以前本欄でご紹介した『がん 4000年の歴史』でピュリッツァー賞に輝いた医師が、今度は「遺伝子」の全てを語り尽くした。
遺伝子の発見から、解読、編集にいたるまで
著者は1970年、インド・ニューデリー生まれ。スタンフォード大、オックスフォード大で学び、ハーバード・メディカル・スクールを卒業している。血液のがんを専門とする医師で、現在は、コロンビア大学メディカル・センター准教授である。
デビュー作の『がん 4000年の歴史』でいきなりピュリッツァー賞、ガーディアン賞など多くの賞を受賞し、「タイム」誌の「オールタイム・ベストノンフィクション」にも選ばれた。本書も、「ニューヨーク・タイムズ」ベストセラー・リストの「ノンフィクション部門」1位を獲得し、32か国に版権が売れているという。
約800もの参考文献をもとに、1865年以降の科学史のハイライトを生き生きと再現してみせる一方、差別を生む影の側面も容赦なくえぐり出す。
専門の血液学、腫瘍学を基本とする分子生物学の専門知識はもとより、幅広い教養と巧みな比喩を駆使した筆力には、ただただ圧倒された。