2024年4月19日(金)

中国メディアは何を報じているか

2013年12月27日

 そしてこのような秘密保全部局は地方自治体の末端組織にも設置されている。日本の県に相当する省ではもちろん、その下の政令都市とでもいうべき地区級市、そして更に下級の県(市に相当)や区にも秘密保全部門が設けられているのだ。つまり新宿区のような自治体にも秘密保全局が設けられていて、司法機関と協力して機密漏えい事件の捜査、審理を行う。前述のネットに写真を掲載した一件は空軍の秘密保全部局から通報を受けた県の裁判所が判決を下したのである。

 時代の変化に合わせ2010年に法改正が行われたが、それは情報漏えいの70%がネットによるという新たな状況が生じたためである。しかし、改正時に言われたのはアメリカでは機密文書が年に10万件程度である一方、中国ではそれが数百万件を超える。文書は機密度の低いものから、内部(党内、軍内等)、秘密、機密、絶密(トップシークレット)と区分されている。

 機密文書の量だけでなく、部門も多岐にわたる。軍に限らず、政府や党、国有企業も機密範囲を設定できる権限が与えられている。それゆえ記事で紹介したように国有企業や大学でも秘密保全の徹底が求められているわけである。

「竹のカーテン」の大前提も
崩れているという現実

 日本人の想像以上に、中国は依然として秘密主義であることがよくわかる。政治面で共産党の一党支配を堅持し、経済では市場経済を表面上取り入れるためにはしょうがないかもしれないが、政府や党の警戒感と敵対心の強さはかつてのソ連を想起させる。すでに経済面では市場主義が浸透していながら、政治面ではレーニン主義が依然として幅を利かせているのだ。

 秘密保全を巡る政府の意識は未だに欧米や「分裂主義者」などの「敵対勢力」による「分裂化」への警戒感に依拠しており、こうした面での思想教育強化が常に強調される。しかし、もはや中国を侵略しようなどと思う国は皆無で体制崩壊や分離独立への動きのほうが現実味を帯びている状況において中国が直面する「脅威」は国外ではなく、国内に存在しているのだ。「人民内部の矛盾」が喫緊の課題となった今、秘密保全という「竹のカーテン」の大前提も崩れている現実を理解してほしいものである。

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