IFAの主役だった日本メーカーは
ほとんどが出展を見送り
ところが新しい商品の展示となると話はまったく変わる。コロナ前までは日本の家電メーカーが大きな展示ブースを構え、最新の薄型テレビやデジタルカメラ、オーディオ機器などを展示していたが、今回の見本市でブースを公開していたのは残念ながらパナソニックとアイワくらいだった。
かつてはソニーやパナソニック、シャープ、東芝、JVCケンウッド、パイオニア、ヤマハ、エプソン、ニコン、キヤノンといった日本の有力メーカーがそれぞれブースを構えていたが、コロナ禍をきっかけにほとんどのメーカーが出展を取りやめてしまった。ソニーとシャープは商談ブースを設けていたものの、いずれも白い壁で覆われ、一般客の来場を認めず、パナソニックの展示ブースもメイン会場から離れた小規模なものに変わっていた。
日本メーカーの展示がなくなったことから、日本の企業関係者やジャーナリストなども現地を訪れておらず、コロナ前までは多くの日本人が会場に詰めかけていたのに、その数はぐっと減ってしまった。以前は顔なじみの記者に会場でよく出くわしたが、その数も限られていた。こうした傾向は実はコロナ後初のリアル開催となった昨年のIFAでも見られたが、今年はまた日本のプレゼンスが戻ってくるだろうと思っていた筆者の期待は見事に裏切られてしまった。
そんな中でもしっかりブースを構えていたのは、ソニーの傘下で事業を終了し、その後外部資本によって復活を遂げたアイワだ。情報通信企業のテクミラホールディングスのグループ企業としてオーディオ機器以外にも力を入れ、日本でもこの9月からサッカー元日本代表の中山雅史氏をイメージキャラクターに採用するなど攻勢をかけている。
アイワの展示ブースで責任者を務めていた現地のアルベルト・ロペス最高事業成長責任者(CGO)は「SONYブランドは海外で有名だが、実は中近東や中南米といった国々ではSONY以上にAIWAブランドが浸透していた」と指摘、そのブランド力を再び活かそうという戦略だ。興味深いことに、今回のIFAには2002年に経営破綻した中堅オーディオメーカーのナカミチもブースを構えていた。コロナ禍を経て大手メーカーが海外でのブランド展開に二の足を踏んでいる中、アイワやナカミチといった経営破綻組の日本メーカーがIFAのような舞台で息を吹き返しているのは皮肉な話だった。