古墳のために集まる専門家たち
当時、古墳の麓にあった古民家は長期間空き家になっていて、かなり傷んで中にはアライグマが8匹も住みついていたという。また墳丘にもイノシシがいたらしい。このままではいつ倒壊するか知れないが、山辺の道沿いだけに景観上もよろしくなかった。
そこで前田さんは引き受けたものの、これをどうするか?
前田さんがまずとった手段は、SNSにアップすることだ。すると大反響。古墳に興味を持つ人は非常に多かった。奈良の魅力、古代史の魅力を再認識したのである。
そこで「もらっちゃった古墳、どうする?」をテーマにオンラインミーティングを計6回開催した。参加者は学生や古代史ファン、奈良ファンのITエンジニアや建築家など幅広くいた。その中から出てきたアイデアが「古墳で眠りたい」だったのである。
それなら宿にしよう。そのためには改築しないといけない。その資金は、設計は、人手は……そんな難問が押し寄せるが、実はそれらも全部オンラインの中で解決していく。資金は共同代表でもある高野琢巳さんたちが出資してくれ、さらに建築やガーデニングなどリフォームの専門家も集まったのだ。
まず母体となる会社cofuiaを設立。それからトラック何台分にもなる家具などを運び出し掃除を行うところからスタートだ。
さらに墳丘の茂みも刈り払い……そんな作業に手弁当で作業するボランティアが集まる。総勢は全国から100人以上、なかには海外からの参加者もいたという。
常時20~30人が通いや泊まり込みで作業した。彼らのために炊き出しを行う人も現れる。リフォーム作業そのものがワークショップになったのである。
おそらく建設会社などに改修を頼んだら、全部取り壊して建て直すことを勧められただろう。しかし地域は市街化調整区域内なので新築はできない。だからリフォームで行わねばならないが、そこに重要な役割を果たしたのが、設計やデザイン、施工、DIYのサポートなど多岐に渡る専門家がいるものづくり集団「TEAMクラプトン」だった。
その施工スタイルは「みんなでつくる」こと。素人でも簡単な指導で何でもこなしてもらう。参加者の誰もが古墳に関わることを楽しみつつリフォームしたのだ。