2025年3月13日(木)

Wedge REPORT

2025年3月13日

古墳や史跡が未来を切り開くか

 昨年10月に完成し、宿泊施設としては今年3月20日からオープンする。

 なお墳丘部分の管理には、別途ヤマノベコモンズ労働者協同組合を立ち上げた。西山塚古墳だけでなく、ほかの古墳や耕作放棄地、空き家などの管理を行う事業体だ。こちらの組織は、ガーデン・ランドスケープデザイナーの結城博美さんが引き受けた。

 まさにネットで参集したメンバーが、それぞれの得意分野を受け持ちつつ経営するスタイルなのである。ちなみに宿泊客の募集もネットで行うが、上々の反応でオープン前から予約で埋まった部屋もある。

 一方で、前田さんは民族植物学の研究も続けており、今も国の内外を調査に歩く。その成果を活かして、民泊で出す料理の薬膳鍋の監修なども行う。できれば墳丘で育てた野菜や薬草を利用したいという。

 「民泊扱いのため開業は年間180日間までと決まっています。だから1月、2月、8月は休業しますが、その期間を利用して企業研修や歴史・考古学体験、農業ワークショップなどのプログラムを実施することも考えています。同時に地域交流イベントで地元の職人とのコラボや移住促進策なども展開していきたいですね」(前田さん)

飲食棟の窓も前方後円墳形

 古墳の宿と聞けばマニアックな世界に聞こえるが、意外と遺跡に憧れる層は厚く、日本人だけでなく外国人も喜ぶという。しかも訪れて観るだけでなく、当時の暮らしや食、仕事などを体験として売り出すことで、多くの人を夢中にした。古墳や史跡は現状を保全するだけなく、未来を切り開く力も発揮できるのかもしれない。

 でも……と思った。もし西山塚古墳の発掘が行われて、富雄丸山古墳から出土した蛇行剣のようなお宝が見つかったらどうするんだろう、と。余計なお世話だろうが。

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