2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年10月4日

 ルポライターが埼玉県川口市のウイークリーマンションに住み込み、クルド人問題を取材した書籍『おどろきの「クルド人問題」』(新潮新書)を、紀伊國屋書店の大阪市内の店舗がXで「新書おすすめ」投稿したことに「差別的」などといった声が広がった。批判を受け、店舗は「差別的な表現を助長しかねない可能性があった」と謝罪し、投稿を削除する事態に発展した。

(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 特定の社会問題を扱った書籍や言論が、その内容を吟味されることなく、「正しさ」を振りかざす人々によって社会から排除される事態が近年相次いでいる。2024年初頭には、KADOKAWAから刊行が予定されていた書籍『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』が、類似の抗議活動によって出版中止に追い込まれた一件もあった。

おどろきの「クルド人問題」
石神 賢介 (著) 新潮社
¥968 税込

 本書は、性自認に疑問を持った思春期前後の女性が性転換手術やホルモン治療を受けた後に後悔した事例を取材したノンフィクションで、欧米ではベストセラーとなっていた。ところが日本語版の出版に際し、一部の団体や個人から「トランスジェンダー当事者へのヘイト」「差別を扇動する」などの抗議が殺到し、出版社は刊行中止を決定した。

 後に、この書籍は産経新聞出版から『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』と改題されて刊行されたが、その過程でも、取り扱いを予定した書店に対して「放火する」といった脅迫メールが送られるなどの妨害が横行した。

 一部の大型書店では「欧米でベストセラーとなっている」本書の取り扱いを、一切行わないという異例の事態に至った。さらに、個人・独立系の書店では「キャンセル」側の主張に理解を示し、本の内容に批判的な手作りの帯文(手書きPOP)を巻いて販売する書店や、「ヘイト本は置かない」と宣言し取り扱わない書店もあった。


新着記事

»もっと見る