このように自己免疫疾患のケアは多面的なアプローチを要するが、患者のコンテクストを理解してケアプランを作り、患者の症状と生活状況を総合的に評価しながら継続して微調整することが、長期的な寛解と患者満足度向上に寄与する。
制御性T細胞が果たす役割
RAやUCなどの自己免疫疾患の予防と治療において、制御性T細胞(Treg)は今後どんな役割を果たすのか。オーバラップする部分もあるが、おおよそ次の3つのメカニズムに焦点を当てた取り組みが想定される。
① 自己免疫反応の抑制:自己免疫疾患では「自己」に対する免疫反応が過剰になり、関節滑膜や大腸粘膜などの炎症と破壊を引き起こす。その自己免疫反応を働く細胞の活性化や増殖をTregが抑制できれば、炎症の過剰な進行を防ぐことができ、疾患を予防または遅延させることができるかもしれない。
② 炎症性サイトカインの制御:Tregは炎症性サイトカイン(例えば、TNFα、インターロイキン-17など)の産生を抑制できる。これにより、炎症の拡大や組織破壊を抑えることが可能となる。
③ 免疫バランスの調整:免疫は攻撃と防御の絶妙なバランスをとっていて、それが崩れるとさまざまな疾患を引き起こす。Tregの量と働きを調節することでこのバランスを正常化し、疾患の進行を抑制したり治療の副作用を軽減できる可能性がある。自己免疫疾患を治療する一方で、感染症やがんのリスクを高めないようにする必要がある。
まとめると、制御性T細胞は、自己免疫反応の抑制、炎症のコントロール、免疫のバランス維持といった役割を持ち、自己免疫疾患の予防や治療において中心的な免疫調節のターゲットと考えられている。
I.F.さんが言うように、実用化までにまだまだ時間はかかるとは言え、今後の研究と臨床応用により、Tregを活用した革新的な治療法の開発が期待される。
