ブレヴェストニクは、理論上は無限と称するほどの航続距離をもち、探知・防御が極めて難しく、運用可能となれば重要な戦力となろう。しかし、これまでの実験で成功とされたものはなく、今回初めて「成功」を主張しているが確認できない。
そもそも原子力推進のミサイルは「空飛ぶチェルノブイリ」と言われ、扱いが非常に難しく、実際19年には実験の失敗で科学者5人が死亡している。加えて極超音速ミサイルが開発されている今、軍事技術の進歩により亜音速で飛行するミサイルに対する迎撃率は高くなっており、扱いの難しいブレヴェストニクを敢えて使用することのコストパフォーマンスの問題がある。
核戦力の近代化への懸念
原子力推進の水中飛行体「ポセイドン」の発射実験も18年頃から段階的に進められており、今回についても「潜水艦からの発射」に加え「原子力推進ユニットの起動」が初めて成功した、としていることを見れば、これにてポセイドンミサイルが「完成」したということでは必ずしもないとみられる。
原子力推進に伴う扱いの困難さについてはブレヴェストニクと同様である。実戦配備を予告した大陸間弾道弾「サルマト」も、昨年9月に行われた発射実験を含め、何度も失敗している。
今回のミサイル等の発射実験実施の背後には、ウクライナ戦争の関連での米国に対する牽制という直接の目的だけではなく、ロシアの核戦力の近代化という、より広範な戦略目標があることには十分な注意が必要である。ブレヴェストニクなどは、米国が進めようとしているゴールデンドームのような大規模防空システムに対する対抗措置としても位置付けられているであろう。
いずれにせよ、広い意味での「核戦力」の強化は、今後の国際安全保障において一つの潮流として避けて通れないように思える。
