それを受け、北村毅(つよし)大阪大教授がこう言う。
「やっぱり人を殺さなければいけないっていうのが、軍隊組織の最も重要なタスクなので。日常の中ではそれをやっちゃいけないと言われていたわけですから。それをできるように自分をまずは変容させなければいけない」「その人が大切にしていた部分がすっからかんにされて、帰ってきても誰も歓迎してくれない。あれだけ旗を振ってくれた人たちが、本当に何しに帰ってきたのっていう扱いですから。怒りの行き場は家族しかなかったってことではないのかと思います」
戦後社会が抱えた「病」
妻へ子へ、孫の世代にまで及ぶ暴力の連鎖を映画は追っていく。登場するのは三家族にすぎず、内実は人、家により違うだろう。戦争で受けたトラウマが社会にどう影響するかをはかるのは簡単ではない。
「直後でなく、何十年も経って、ホットな記憶として蘇ることもあり、社会全体の実態はなかなか掴めない。300万以上の兵隊や軍属が日本に戻り、いくつかの調査では5割ぐらいがPTSDにかかると言われてます。やっぱり100万人単位でいたはずです」と監督は言う。
「それがほとんどケアされずに社会に放り出されたわけです」
仮に100万として、家族も含めれば、数百万人。映画に登場するトラウマを抱える孫の世代まで入れれば、どれだけの数になるのか。
戦争が終わり戦後民主主義の平和な時代になった。はい、おしまいという話ではない。戦後社会を一つの人格とみれば、それは少なからずの「病」を抱えている。それが戦争に関わってしまった社会の内面と言えるだろう。
