2026年3月15日(日)

Wedge REPORT

2026年3月15日

 ラテンアメリカやアフリカなど大戦に関わってこなかった社会と、日本や欧州、米国など第二次世界大戦に深く関与した国々との違いはなんだろうか。単に「呑気な途上国」「南の楽天ぶり」といった言葉では片づけられない、性質の、気質の違いのようなものがあるのではないか。

 そんなことまで、この作品は考えさせる。

圧倒される事実を伝える魅力

 これまでの映画と同様、島田作品に登場する人々は実に自然に振る舞う。カメラなどないかのように本音を語る。

島田 陽磨(しまだ・ようま) 撮影・監督・プロデューサー
1975年生まれ。早稲田大学教育学部生物学専修卒業。探検部在籍時に起きたアマゾン川部員殺害事件で取材を受けたことをきっかけに日本電波ニュース社に入社。テレビディレクターとして、2003年のイラク戦争など国内外の報道やNHKなどのドキュメンタリー作品を数多く手掛ける。三度の訪朝取材をもとに北朝鮮と日本に引き裂かれた姉妹の58年ぶりの再会を描いた「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。」でWorld Media Festival 2023 ドキュメンタリー部門(Human Concerns) 金賞、ニューヨークフェスティバル 2023 ドキュメンタリー部門(History & Society)銀賞など。((C) Nihon Denpa News Co.,LTD.)

 「かなりセンシティブで重たいテーマでしたので、出演してくださる方々は元々傷つきやすかったり、過敏な反応をされたりすると予想していました。意識したのは、あえて聞かないようにしたことです。相手が話すのを待つ。その距離感が信用に繋がったのか、後半はご本人たちから『父の軍歴証明書を取りに行くから一緒に行きませんか』とか『墓参りについてきてくれませんか』と声をかけてくれました。偶然にも3人がほぼ同時に、父や祖父の足跡をたどりだしたんです。私も驚きました」

(C) Nihon Denpa News Co.,LTD.

 独自表現など監督自身の欲を感じさせないのも特徴と言える。

 「苦しんでいる人を助けたいというヒューマニズムはあまりない」と監督は言う。「それよりも、まだ語られていない、知られていない人生を見つけたいという思いが強い。大きな物語から外れてしまった人の人生から、世界の多様性に気づきたいというのか」

 なぜそうなったのか。

 「自己表現への欲求は大学に入ったばかりのころはあった気がするんですが、あるとき急になくなり、冷めた感じになりました。22歳のとき、早稲田大学探検部の同期2人がペルーの陸軍兵士に殺され、27歳でイラク戦争の取材に行ったからなのか。戦禍の人々を見て、『自分という存在なんて、大したことない』と感じるようになって。人はどうせ死ぬし、現実に流され、どうにもならないことがほとんどです。下手に自分程度のものが意気込むより、圧倒される事実を伝えることに魅力を感じるようになったのかもしれません」

 重いテーマながら、見る者をどこか心地よくさせる。この感じは、彼の静かな視線が生みだす妙なのだろう。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る