2026年3月18日(水)

World Energy Watch

2026年3月18日

広がるホルムズ危機の影響

 ホルムズ海峡を通るのは、原油と液化天然ガス(LNG)だけではない。ナフサなどの石油製品に加え、LNG製造の副生品ヘリウム、肥料原料にも使われるアンモニアもある。

 カタールのLNGプラントがイランのドローン攻撃を受け、操業を停止した。欧州では天然ガス価格が約6割上昇したが、カタールが世界の3分の1を生産しているヘリウムの供給に大きな影響が出そうだ。

 ヘリウムは風船に利用されるので、よく知られているが、半導体製造、医療用MRIなどに欠かせない。ヘリウムの供給が減少することで半導体製造への影響が懸念されている。ショッピングモールなどで子供に配られる風船も当面なくなるだろう。

 天然ガスから製造される肥料原料にもなるアンモニア、尿素も影響を受けている。エジプトを含む中東の世界のアンモニア輸出に占めるシェアは30%、尿素のシェアは49%ある。

 中東の肥料への依存が高いのはインド、ブラジルとされるが、輸出量の大幅減少が見込まれることから、世界的に肥料の価格が上昇する可能性が高い。

 これから作付けシーズンを迎える米国の農家は、肥料の値上がりにより利益の大幅な減少に直面すると深刻な懸念が広がっている。3月9日に全米農業連盟の会長がトランプ大統領に対し、提言を盛り込んだ書簡を送り、介入を要請した。

 書簡は、対策を講じないことによる潜在的な影響を説明し、農業資材の供給を戦略的に優先しなければ、米国は作物の不足に陥るリスクがある。これは食料安全保障、ひいては国家安全保障に対する脅威であり、インフレ圧力をもたらす可能性があると指摘している。

 エネルギー価格の引き下げ、生活費高騰問題を解決すると公約で打ち出したトランプ大統領としては、頭が痛い農業連盟の書簡だ。

 イラン攻撃前の世論調査では、有権者の72%が「トランプ関税が物価を引き上げた」と回答している。支持率上昇には物価を下げることが必要だが、トランプ大統領はどこまで問題を理解しているのだろうか。

 農業連盟からの書簡が出された後のケンタッキー州での集会では、「インフレ率は急落し、所得は増加し、経済は力強く回復している」と演説したと報じられた。

高騰するガソリン価格

 米国の化石燃料市場では、石炭は世界市場にはまったく影響されない安定的な動きをしている。天然ガスは少し世界市場の影響を受けることもある。今回のホルムズ封鎖では欧州の天然ガス価格が大きく上昇したにもかかわらず、米国の価格はほとんど変動していない(「なぜトランプは国防総省に「石炭火力」電力購入を指示したのか?“再エネ推し”する日本の政治家が見習うべきこと、安定供給はどこへ…」 Wedge ONLINE)。

 しかし、米国の原油価格は世界市場とまったく同じ動きをする。したがって、トランプ大統領が「掘って、掘って、掘りまくれ」と号令をかけてシェールオイルの生産を増やしても、原油価格もガソリン価格も下がる保証はない。

 ホルムズ危機で原油価格が上昇すると、たちまち米国のガソリン価格も上昇したが、アメリカのドライバーへの影響は、日本のドライバーよりも大きい。平均的な米国人ドライバーは、1年間2万2000キロメートル(㎞)運転するとされる。約7000㎞運転する日本人ドライバーの約3倍になる。

 もちろん、公共交通機関が発達しているニューヨークなどでは運転距離は少なく、公共交通機関が全くない州では運転距離は長くなる。最も車に乗るのは、ワイオミング州のドライバーで月間1498マイル(年間約2万9000㎞)。運転が少ないのはニューヨーク州のドライバーで月間725マイル(年間約1万4000㎞)だ。


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