2026年3月24日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月24日

 現在の米国とイスラエル軍事作戦はイスラム革命体制の崩壊を狙っているとみられ、既にイランの軍事力や指導部は壊滅的打撃を受けている。イラン側は中東地域の米軍基地やイスラエルなどに対して報復攻撃を行い、国際的孤立をさらに深めている。

 それでもイスラム革命体制が短期間で崩壊する可能性は低い。イランの政治制度は冗長性と耐久性を重視して設計されており、指導部は長年「斬首作戦」に備えて来た。一方、反体制派は分裂し、武器も持たず、通信や組織化も困難である。

 とはいえ、この体制が永遠に続くわけではない。今回の敗北後、イスラム革命体制は新たな最高指導者を選ばなければならないが、誰が体制の維持を図るとしても、国内混乱や周辺国との関係悪化、国家再建という巨大な課題に直面する。イスラム革命体制がかつてのような支配力を完全に回復する可能性は低く、核開発や弾道ミサイルなどの国家プロジェクトも失敗に終わった。

 米国は空爆だけで体制を倒すことはできないが、外交を通じて次の政治秩序に影響を与える好機を得ている。しかし、戦後に残った体制エリートとの安易な妥協は、革命体制の延命につながる危険がある。米国と同盟国は、誰と交渉するかについて高い基準を設けるべきだ。

 外交の目的は単なる安全保障の問題ではなく、イラン社会に持続的な政治変化をもたらすことである。戦争によって核開発、弾道ミサイル、代理勢力といった従来の脅威は弱体化した。今こそ米国は、これまで軽視してきた課題――イラン国民が望む未来を実現する機会――に焦点を当てるべきである。

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イラン国内治安の揺さぶりへ

 2月28日、米国とイスラエルが突如、イランを攻撃してハメネイ最高指導者他の要人を殺害した。翌週、再協議を約束していたのにも関わらずこのタイミングで、しかも空爆のやり方としては異例な白昼に行ったことは、この時間にこの場所にハメネイ師がいるという事について確実なインテリジェンスを入手していたことを示唆している。

 開戦劈頭に同師を殺害したことは、米国・イスラエル連合軍の作戦目的がイランのイスラム革命体制の崩壊であることを明確に示している。トランプ大統領もしばしば、レジーム・チェンジを示唆する発言をしている。しかし、上記の論説も指摘しているが、空爆だけではイスラム革命体制を崩壊させるのは困難だろう。

 武力衝突は、まず米国・イスラエル連合軍の空爆で始まったが、中東域内の米軍関係施設に対するイラン側の報復は十分な成果を上げておらず、イランは軍事的に不利な状況にある。

 これに対してイラン側は、非対称戦略を選び、ホルムズ海峡の閉鎖を宣言する等、世界の原油供給の30%を占めるペルシャ湾地域からの原油輸出を停止ないしは著しく減少させ、米国内のガソリン価格を高騰させる戦術に出た。つまり、トランプ大統領に対して「武力攻撃を止めなければ米国民の関心の高いガソリン価格を上げて中間選挙で敗北させるぞ」ということだ。


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