2026年3月24日(火)

トランプ2.0

2026年3月24日

 記者には、ジャーナリストとしてあたりさわりのない質問をするためにその場にいるのではなく、ことの本質をつくためという気概があったのかもしれない。ただ一方で、円満に会談を終了させたい日本代表団にとっては、背中に弾が飛んできたと感じた向きもあったのではないだろうか。記者が質問する間、茂木敏充外相は首を曲げて記者の顔を注視し続けていた。

米国での会談報道はトランプ発言が中心に

 案の定この質問は、「奇襲攻撃に日本ほど詳しい国はないだろう。なぜ真珠湾攻撃のことを教えてくれなかったんだ」という一部場が凍り付き、一部失笑を誘う返答をトランプの口から引き出すことになった。その場は気まずい空気に包まれた。高市首相は口を閉じてやり過ごしたが、目を丸くした表情が世界で報じられるに至った。

 「高市の顔からほのかな微笑みが消えたように見えた」というAP電は、多くのメディアで採用された。日米首脳会談に関する米国内の報道において、会談内容が吹き飛び、真珠湾についてのトランプの発言が中心となった瞬間であった。

 ABCはメインの夕方のニュースでアンカーのデイビッド・ミュアーが会談の模様を報じたが、中心となったのはトランプの真珠湾発言だった。CNBCは「トランプ・高市会談で、気まずい歴史が再び表面化した」と報じた。FOX「トランプ氏は、真珠湾攻撃に言及して冗談を飛ばした」との見出しで報じたし、系列局も「トランプ氏、日本の首相の面前で真珠湾攻撃をネタにした」を見出しにした。

 まじめなニュース番組が扱ったくらいなので、もちろんナイトショーもこの話に飛びついた。ジミー・キンメルは、「真の指導者が私たちを訪ねてくると、私たちはしばしば気まずい思いをする。今日はその気まずさがビックリするようなやり方で新たなレベルになった」と述べたうえで、「彼が真珠湾について知っていることは、ベン・アフレックが出演した映画に始まりその映画に終わることに寸分の疑いもない」とトランプのことをからかった。

 トランプの首脳会談における言動が、気まずさをもたらしたのは今回が初めてではない。一期目就任直後、ホワイトハウスにドイツのメルケル首相を招いた時のことだ。移民問題などを巡り考え方が大きく異なる首相の握手をトランプは頑なに拒否し気詰まりな雰囲気が漂ったことがあった。

 昨年ホワイトハウスで米独首脳会談が行われた際、今回の真珠湾発言のような出来事もあった。その日は6月5日で、メルツ首相が翌6日がノルマンディー上陸作戦の日であることに触れると、トランプはドイツ人にとっては「楽しくない日」だっただろうと発言した。メルツ首相が「そんなことは……」と言いかけると畳みかけるように「いい日じゃなかった」と遮った。メルツ首相は、今のドイツとナチスを同一視するようなトランプの発言に対して「ナチスの独裁から解放された日だった」と毅然と述べたが、その場は気まずい空気に包まれた。

 トランプとの首脳会談ではこのように不意を突かれたようなことが起きるものであるが、真珠湾発言についてあえて良かった点を探すこともできる。真珠湾にも擬えることができるような奇襲攻撃を米軍も必要に迫られ行ったと米大統領が発言することによって、真珠湾攻撃は卑怯であったという米国内のイメージが少しは弱まるのではないかということである。


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