2026年5月23日(土)

つくりびととの談い

2026年5月23日

9人の職人が集う
「超アナログ」の世界

 中村建材の創業は1935年、淡路島出身の初代が大阪でテラゾー(人造大理石)を造り始めたことにある。戦後、大型のPC(プレキャスト・コンクリート=事前製造した外壁などの建材)の製造を始めると工場が手狭になったため、広い土地を求めて五個荘に生産拠点を作った。二代目社長の中村幸壽さん(78歳)が言う。

 「近くを流れる愛知川の川砂と砂利がコンクリートの良質な骨材なので、愛知川の流域には建材メーカーや橋梁メーカーのPC工場がたくさんできたんですよ」

 中村建材もその一角だったが、バブル崩壊後、ゼネコンの多くがPCの内製化を始めたため、以前から細々と製造していたノンスリップタイルに特化することになった。

 ノンスリップタイルとは、滑り止めの黒いゴムが組み込まれたコンクリート製のタイルだが、安全性が重視される鉄道関連施設や歩道橋で使われるタイルの製造に熟達した会社は、極めて少ないという。常務の四藤主典さん(51歳)が言う。

 「ノンスリップタイルは幅30センチ、厚さ2.5~3センチ。長さにはバリエーションがありますが、表面から滑り止めゴムが2ミリだけ頭を出しています。簡単そうで、実際は造るのがとても難しいんですよ」

 ゴムが出ている表側とコンクリだけの裏側では収縮比率が違うから、反りが出やすい。複数の混和剤を加えて反りを防ぐが、最適な配合比率にたどり着くまで試行錯誤の連続だった。中村社長が言う。

 「工場を見ていただきますと、きっとなんでこんなに旧式なのかと思われるでしょうね。機械を導入したこともありましたが、内部に空隙ができたり、むしろ手間がかかったりするので旧式の方がいいんですよ」

 どれほど旧式なのかと妙な期待を抱いて工場へ向かうと、そこは旧式も旧式、超アナログの世界であった。

セメントと砂、混和剤と水を絶妙な比率で練り上げ、「ねこ」と呼ばれる二輪車に流し入れる

 作業工程は単純明快。直径2メートルほどのミキサーにセメントと砂、混和剤と水を加えて攪拌し、練り上がったモルタルを二輪車に流し入れて打ち込み工程のメンバーに分配する。

 打ち込み工程では滑り止めのゴムとゴムを固定する鉄線、強度を出すための配筋をセットした金型にモルタルを流し込んでタイルを成形するのだが、この作業がまさに旧式。

金型の表面すれすれまで柄杓でモルタルを流し込んだあと、金型の両脇を両手でつかみ、揺らしていく。「下手なうちは体だけが揺れる」という

 金属製のローラーの上に乗せた金型に二輪車から柄杓で掬ったモルタルを流し込むと、モルタルが金型の隅々まで気泡を含まずに浸透するよう、職人が手で金型を揺するのだ。

 普通ならバイブレーターを使って気泡を追い出すところだが、ゴムがずれてしまうから使えない。それゆえの、完全な手作業である。


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