打ち込みチームは総勢9人。平均年齢は50歳超。リーダーを務める奥智之さん(45歳)が言う。
「僕は11年目になりますが、コツをつかむのが難しいですね。打ち込みは、簡単そうで奥が深いんです」
1日に最大で60枚を打ち込む。俯いた姿勢で、金型を揺すり続ける作業は辛くないだろうか。
「この仕事は個人プレーなので、僕みたいに協調性のない人間には、性に合っていますね。毎日、黙々とマラソンを走ってる感じです」
誰かがノルマの管理をしているのかと思いきや、それはないという。
「うちは厳しい人がひとりもいないのに、なぜか職場が回っている。潤滑油みたいな人がいるからですよ」
その〝潤滑油〟こそ、モルタルまみれでミキサーを回している今回のつくりびと、中村幸徳さん(73歳)である。
ミキサーを回しながら
職場も回す大ベテラン
中村さんが中村建材に入社したのは35年前。ミキサーマンになって25年になる、大ベテランである。
ミキサーマンの仕事の肝は、モルタルの水分調整にある。雨が降れば砂が含む水分が増えるが、夏場は水分を多めにしないとモルタルがすぐに硬化してしまう。もちろん流量計で水分量を計測しているが、最後に頼りになるのは、人間の目、人間の感覚だ。
中村さんが言う。
「大事にしてるのはチームワークやね。ジイさんがいらんこと言うたら喧嘩になるから、なるべくみんながやりやすいように要望を聞きながらやってます。それが一番、会社のためになりますやん」
頭に浮かぶのは給食の配膳係だ。多め少なめの要望を聴きつつも、不満が出ないように過不足なく分配していく。ミキサーマンの仕事の醍醐味も、そんなところにあるのでは?
「あんたうまい事言うけど、仕事の喜びとか面白さとか、考えたことないなぁ」
うむむ。では、長老として職場を回すことにやりがいを感じる?
「ない。長老とか考えたこともない。うちの会社は上とか下とかないの」
喜びも面白さもやりがいもない……。小賢しい質問の矢が尽きた。
「でもな、モルタルを残さずにピシッと使い切れた時は、最高やな。ミキサーをきれいにさらえた時は、気持ちいいなぁ」
まさに、始末ではないか!
中村さんは朝6時半に出社して、ぴったり5時に退社する。飲みに行くこともない。ひたすらミキサーを回しながら、モルタルを取りにきた同僚とひと言だけ冗談を交わす。
「休みにゴロゴロしてると逆に体がだるくなるけど、仕事しとったらシャキッとするから休みはいらん。会社がやめろと言うまで仕事するつもりやけど、週休1日でいいよなぁ」
争わず、支配もせず、極力無駄を省きながら自力で仕事を続ける。始末とは長期的な経済合理性を実現するための、思想かもしれない。
