2026年5月28日(木)

Wedge REPORT

2026年5月28日

2つの処方箋

 では、こうした株高不況とも言うべき状況はどうしたら改善されるのであろうか。2つの答えがある。

 一つは、家計が資産構成をインフレ経済に対応したものに変化させることである。デフレ期においては現預金を保有することに合理性があったが、現預金はインフレに脆弱であり、利子収入はインフレ負けに陥ってしまう。株式などインフレに強い資産を有する家計が増加すれば、経済全体としてインフレ耐性が強まる。

 もう一つは、持続的な賃上げである。過去数年の日本においては漸く賃上げが定着してきたが、労働者はその持続性にまだ懐疑的なようだ。

 労働市場のデータが頭に入っている多くの専門家は、人手不足に起因する賃金上昇圧力を構造的な現象と見做していることから、賃金上昇の持続性は高いと判断している。他方、必ずしもそうしたデータを把握していない人は、最近の賃上げを単なる「幸運」「一過性現象」と考えている可能性がある。

 事実、アンケート調査をみる限り、収入に対する期待はさほど高まっていない。賃上げの持続性に多くの労働者が自信を持てば、将来不安はいくぶん和らぐと期待される。

賃金インフレへの警戒も

 ただし、悩ましいのは賃金上昇率が既に3%程度まで高まっていることだ。毎月勤労統計で示される正社員の一人あたり賃金(一般労働者の所定内給与、共通事業所版)は24年以降に概ね3%弱で推移した後、25年はサンプル要因に起因する下押しがあったとみられ2%台前半に落ち込んでいたが、26年入り後は再び3%程度の軌道に回帰している。

 26年春闘賃上げ率に鑑みると、同程度の賃金上昇は向こう1年程度続くことが見込まれる。長期デフレを経験した日本では、賃金は上がれば上がるほど良いといった風潮すらあり、賃金インフレの脅威に対する警戒は乏しい印象がある。

 ただし、冷静に考えると現在の3%の賃金上昇率は2%の物価目標に対して整合的かつ理想的であり、これ以上の賃上げは物価を上振れ方向のリスクに晒す危険がある。たとえば、賃金が5%上がったら、物価上昇率は4%かそれ以上の上昇となってしまい、こうした環境は低所得層に打撃となる。名目賃金が3%程度で安定的に上昇することが望ましい。

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