2026年6月1日(月)

教養としての中東情勢

2026年6月1日

 しかも、米軍基地のあるサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウエートなどのペルシャ湾岸諸国の石油関連施設を弾道ミサイルやドローンで報復攻撃。直接の戦争当事者ではない湾岸諸国を巻き込むことで、米国とイスラエルが容易に攻撃できないよう戦略的転換を実現した。

 これにより、米軍が完全には湾岸諸国を守ることができないことを示し、イランとの共存以外に生きる道がないことを明確にした。この戦略は湾岸諸国のリーダーであるサウジとUAEの亀裂を拡大させた。UAEはイスラエルの防空システム「アイアンドーム」を導入してイスラエルとの関係を深めたのに対し、サウジはイランとの関係が徹底的に悪化するのを回避した。

 米国が求めていた弾道ミサイル開発の制限、ヒズボラやフーシ派など地域のシーア派武装組織への援助停止といった項目が米国の要求から取り下げられたことも“粘り勝ち”と受け止めており、権力を握る革命防衛隊は最高指導者のモジタバ師をうまく操りながら強硬路線を推進していくだろう。

 イラン戦争の将来的な見通しは暗い。暫定合意が交わされ、核協議に入っても「強硬姿勢が米国をくじいた」と味を占める革命防衛隊が核開発の権利を譲らず、対イラン制裁や凍結資産の解除、賠償金の支払いなどを主張する恐れが強い。

 協議がまとまらず、ホルムズ海峡の開放が辛うじて実現するだけで、いつでも戦闘が再開する「脆弱な停戦」状態が通常化する公算が強い。海峡は常に封鎖される危険な状況が続くことになる。

火種はネタニヤフ

 イスラエルのネタニヤフ首相はこうした「脆弱な停戦」をつぶそうとあらゆる手を使うだろう。戦争継続だけが支持率を高め、政治的な延命を図る手段だからだ。

 秋には総選挙が実施され、すでに反ネタニヤフ連合ができた。トランプ大統領は首相への援護射撃としてイスラエルとアラブの和解スキーム「アブラハム合意」の拡大をぶち上げた。

 だが、肝心のサウジに動く兆候はない。選挙が近づくにつれ、首相が火種に点火する懸念が高まる。首相はすでにヒズボラ攻撃を強化する決意を示した。トランプ大統領が待ったをかけても、もはや首相を止めることはできない。

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