「プーチン大統領は、今日の会談において、(計画中のガスパイプライン)『シベリアの力2』に関する基本的な理解において原則的に合意することができた」
ロシアメディアは首脳会談後のペスコフ大統領報道官の言葉を一斉に報じたが、その言葉もまた、具体性が乏しいものだった。ペスコフ氏によれば、両国はパイプラインのルートと、その建設方法について同意したというが、かえって協議が進展しなかったという印象を与えていた。
シベリアの力2とは、シベリアからモンゴル経由で年間500億立方メートルの天然ガスを中国に輸送する、ロシアが最重要視する対中天然ガス輸出計画のひとつだ。ウクライナ戦争の先行きが一層混迷を深める2025年9月、プーチン氏が中国を訪問して中国側とその推進で合意した。
シベリアの力2をめぐる合意は、ウクライナ戦争で孤立を深めるロシアを中国が経済面で支える姿勢を明確に示したという点で特に重大な意味があった。ロシアは戦争開始から3年半が過ぎてもその出口が見えず、前線では死傷者の増大が止まらず地方の困窮した中高齢者まで徴兵をはじめた状況が浮かび上がっていた。対米関係では、トランプ大統領がロシアに接近する姿勢を示していたものの、実質的にロシア側に優位な状況が生まれる保障はなかった。
その中で、シベリアの力2の建設推進という合意を通じ、ロシアを経済面で支えてきた中国が一歩踏み込んだ意義は大きかった。
しかし、その後は計画をめぐる目立った進展は見られず、中国側がシベリアの力2をめぐり公的に言及することはほとんどなかった。そのような状況を打開する上で、今回のプーチン氏の訪中は極めて重要な意味があった。
交差するエネルギー供給における考え
中東情勢悪化を背景に、エネルギー資源輸出大国としてのロシアの求心力は高まっている。東南アジア各国の首脳はロシア詣でを繰り返し、資源の輸入先の多角化を迫られた日本も、水面下で対露アプローチを強めている。
エネルギー供給元としてロシアの重要度が高まっているのは中国も同様だ。今年4月の中国の原油輸入総量において、ロシア産原油は23.3%とほぼ四分の一に迫った。
中国が輸入する原油はこれまで、ホルムズ海峡経由での輸入が40%超とされ、その代替ルートとしてのロシア産エネルギーが重要であることは言うまでもない。ロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入量も増大している。
ただ、ロシアの思惑とは裏腹に、中国は今回の協議においてロシアに対し、シベリアの力2を経由した天然ガス価格をロシア側の提案の5分の1にするよう求めたとも報じられている。ロシア側としては、当然受け入れがたい水準だ。
一方で中国は、ロシア以外の国々からの原油輸入も当然拡大させており、インドネシアやブラジル、コロンビア、アフリカからの輸入も急増している。さらに米国からの輸入開始を検討しているとも報じられており、中国は決してロシアだけに頼ろうとしている わけではない。
