しかし上記の解説記事は、ベネズエラの体制に比べて60年以上の歴史を持つキューバの党、軍、治安組織の協力による体制はカストロ・ファミリーの下で盤石であり、ベネズエラのように野党や活発な民間セクター、市民組織も存在しておらず、政権は一枚岩で親米政策への転換を実現したロドリゲス副大統領のような人材はいないとして、ベネズエラで用いられた手法はキューバでは機能しないとの見方を紹介している。
ゼロではない体制変革の可能性
確かにキューバの歴史的な体制の強靭性は無視できず、表面的にはカストロの訴追がキューバ共産党の求心力をむしろ高めてしまう恐れもあろう。他方、長年にわたる経済崩壊に対する国民の不満も鬱積しており、21年以降抗議デモが繰り返されている。若者層を中心に体制変革を望む声は無視できない規模に達している可能性もあり、GAESAの経済支配が政権の最大の弱点となる可能性もある。
ベネズエラのような政策転換を期待できる指導者は今のところいないであろうが、マドゥーロ体制も当時は盤石と見なされていたのであり、外部からの経済圧力や指導部への個人制裁が続けば、内部の忠誠心に亀裂が入り、状況の悪化に応じて政権内部で現実派が台頭する可能性もあり得る。
直接的な軍事行動は米国にとりリスクが高いが、トランプ政権が目指しているのは全面的な軍事介入ではなく、経済制裁に法執行措置の可能性を組み合わせた心理戦による最大圧力である。キューバの体制を相当程度に追い詰めることは、中間選挙を意識した「成果作り」のためにも強硬路線には合理性がある。
イラン問題が思ったように進展していないことから、キューバ側が全く譲歩しなければ、トランプが具体的な成果を求めて限定的な軍事措置に踏み切る可能性も排除はできない。逆に、キューバ側が何らかの部分的な妥協に応じることによりトランプがこれを成果と見なすのであれば、完全な体制崩壊ではなく、管理された緊張緩和に向かうというシナリオの可能性も高いように思われる。
