2024年11月23日(土)

Wedge REPORT

2015年9月5日

 「今回の審判団にはブラジルや南アフリカなど、野球がまだあまり盛んではない国の審判も参加しています。野球はグローバルなスポーツなので、選手だけではなく、審判も同じように参加国から入って欲しいという思いがありました。日本とアメリカだけではなく、野球はグローバルなスポーツなんだということを感じてもらえればと思います」

毎回異なるメンバーで試合に臨む審判員。国籍の異なる4名がコミュニケーションしながら試合を進行する。

Love Baseball, Love the Game.

 スタジアムを歩き、各国の審判員に話を伺った。英語が母国語ではないイタリアやチェコ、メキシコ、韓国、日本などの審判たちも、声を揃えて「大きな問題はない」という。言葉の問題はもちろんあるし、難しいと感じることもあるが、自分の国でも同じように野球をしていて、合図でコミュニケーションをとることができる。イタリアのリノ・ファブリン氏はプレーの経験はないが、イタリアやヨーロッパ各地で審判をしている銀行マン。

 「素晴らしい大会に来ることができ、感謝している。休養日には審判の仲間たちと京都を訪れることができ、日本の素晴らしい文化にも触れることができた」と話した。ヨーロッパ野球では、近年力をつけてきたチェコ共和国のジリ・クロウパ氏はグスタボ審判部長が今大会で大きな成長をしていると認める一人。

 「チェコはサッカーやアイスホッケーが盛んな国ですが、小学校の授業で野球が取り入れられ始めるなど、人気も少しずつ伸びています。私は選手としてベースボールを終えた時、まだこの競技に関わっていたいという気持ちが強くありました。審判は野球の重要な一部であり、やりがいがありますね」と笑った。

 高校野球の甲子園大会でも審判を長く務めている西貝雅裕氏は、「言葉が違う者同士がやっていて、毎試合審判クルーも違う」と話し、試合毎に違う判断が求められるこの大会を「純粋に楽しいですね」と甲子園とは違う良さがあると教えてくれた。

 各国の審判たちは、ほとんどの方が職業を別に持ち、人生の一部として、楽しみのため、また野球が好きだから、という理由で審判をしている。普段小学生から大人まで幅広く審判をしている高橋進也氏は福島で会社員をしている。社会貢献活動をするのは素晴らしいこと、という会社の理解もあり、今回初めて国際大会に参加した。

 「国によってスタイルがあるんだな、とまず思いましたね。でも、ベースボールは一つ。ルールは同じ。取り組む姿勢も同じ。野球を愛する気持ちも同じ。だから今回の審判団22名が家族みたいに思えて。こういったチャンスを私みたいな地方の審判員に与えていただいたんで、より若い人たちにつなげていきたいですね。世界につながる、夢を大きく持てるっていうことを、今回の大会で強く感じています」

日本代表は清宮選手やオコエ選手など甲子園組が中心。グループリーグは5戦5勝。初の地元開催で初優勝を狙う。決勝戦は明日9/6甲子園で行われる。

  「100%やって当たり前。120%評価されることもない。100%以下だと、プレーをしている選手たちに迷惑がかかるのであってはならないこと」と話した高橋氏。

 WBSC審判部長のグスタボ・ロドリゲス氏は、世界の審判技術を上げる取り組みを行っていることも教えてくれた。

 「WBSCでは審判のキャンプやクリニックを世界中で行っており、技術的なレベルは上がっています。最近では、イタリアと香港で行いましたが、審判ユニフォームのサプライヤーであるSSKの協力を得て実施しました。こうした物品の提供だけに終わらないサプライヤーとの取り組みを行っていくことで、世界に野球を広め、審判のレベルを向上させていくことができています」

 舞洲球場で行われた開会式では、日本高校野球連盟奥谷孝康会長から、「サムライニッポンの3F精神(ファイト、フェアプレイ、フレンドシップ)」を各チームが発揮するよう激励があった。選手同様、12カ国の審判員は、その3F精神をいかんなく発揮している。日本で初めて開催されたWBSC U-18ベースボールワールドカップ。ベースボールがつなぐ人の和が、2020年に向けて新しいうねりを起こすことを期待せずにはいられなくなった。 

  
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