2024年7月16日(火)

WEDGE REPORT

2015年12月12日


日本のGDP500兆円に占める貿易の割合はどのくらいかご存知だろうか。7割? 4割? とんでもない! わずかに2%だ。

 日本のGDPは内需が98%を占め、そのうち6割が個人消費、2割が政府消費だという国だ。個人消費が約7割、政府消費が2割、の米国とほとんど同じ構造なのだ。

 また、輸出入に占める米国の割合も減ってきている。1998年の貿易データを見ると、日本の輸出の30.5%が米国向けで、2位の中国向けの6.6%を大きく引き離しての1位だった。

 2014年、1位は相変わらず米国だがそのシェアは18.7%に低下、2位の中国向けが18.3%にまで伸びた。一方、輸入相手国は1998年の1位が米国で22.3%、2位の中国が12.4%だった。2014年の輸入相手国は中国が22.3%で1位になり、米国は8.8%の2位になった。対米輸出に有利になることだけをもってドル高円安のほうが良い、と言い切れる状況ではない。

円安・ドル高進行のデメリット
円資産価値の目減り

 何より、今の日本の状況を考えると、円安・ドル高の進行の大きなデメリットの1つが懸念される。それは円資産価値の目減りだ。少子高齢化が進み、低成長国となった日本では各資産のリターンが極めて低い状態が続いていくと考えられる。今後、戦後に貯めた巨大なストックを使って富を増やしていこうとするとき、それが個人レベルでも、法人や基金レベルでも、海外の成長率の高い国の力を使ってリターンをあげていくことが必要になるだろう。1ドルが2011年の75円台から今年記録した125円台にまで円安ドル高が進行したことで、1億円の価値は132万ドルから80万ドルにまで減少した。50万ドル分以上の目減りである。

 海外の債券を買うにしろ、株式や不動産を買うにしろ、日本がためてきた円資産で買える海外資産はこの4年間で一気に4割も減ったのだ。日本企業が海外企業を買収したり、海外に進出するする場合のコストも同じだ。もちろん、中国からの観光客による爆買いや、東京や大阪などのホテルが海外からの旅行者に占められて国内出張族が締め出され、国内ホテルの宿泊料金が大きく上昇したのも、海外出張や海外旅行の費用が大きく上がったのも、私たちの稼ぎ、保有する円資産の価値が大きく目減りしたことによるものだ。さらに通貨安はインフレを招き、インフレもまた通貨安を招き、通貨安とインフレ双方が円資産の価値を落としていく。

 ドル円レートが75円台から125円台を記録するまでにドル高円安が進行した、円の価値は4割減り、ドルの価値は6割増えた。その背景にあるのは日本の金融緩和と米国の金融引き締めへの転換見通しだ。日銀の金融緩和は国内景気を良くしたが、その代償として大きな犠牲を払っていることを忘れてはならない。もし、次の円高局面が訪れたらその時は円高を嘆くのではなく、円高のメリットを考え、円高の時にしかできないことをすべきだろう。

  
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