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2016年9月17日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

カメラメーカーから味噌作りへ

法論味噌

 もうひとつ復活させたものがある。法論味噌(ほろみそ)だ。南都の社寺の僧や神官が学問をする際、眠気を催すとなめていたと伝えられる。だが岡本さんが法論味噌の復活を考えたのは、修行のためでも、町おこしのためでもなかった。

 春日大社では正月に「歳旦祭」というお祭りが行われる。古文書によると、室町時代には、歳旦祭での神様へのお供え物には「法論味噌」が含まれていたが、江戸時代になると「赤味噌」で代用されていたのだという。法論味噌とはどんなものだったか。岡本さんは昔のものに戻せないかと考えた。

 奈良県田原本町にある嶋田味噌・麹醸造元の嶋田稔さんはカメラメーカーの役員を退職した後、家業を継いだ。「茜八味噌」の名で味噌を作り、創業260年になる旧家だ。岡本さんは法論味噌の復活を嶋田さんに託した。

 「いや、手間がかかる味噌ですわ」と嶋田さん。通常の味噌に、やき胡麻やくるみ、麻の実、山椒などをあわせて煮込み、さらに天日干しをして、最後にホウラクで煎って仕上げる。嶋田さんの味噌作りは「安全安心な本物を作ること」。そんな信条がなければ到底完成しなかった味噌だ。記録で使う材料は分かったが、配合は嶋田さんが試行錯誤し、完成させた。

 目が覚めるほどに塩辛い物ではなく、どちらかというと栄養価を感じる濃厚な味。「眠気覚ましというよりも夜食のようなものだったかもしれへんな」と岡本さん。酒飲みには肴としてぴったりの一品である。「法論味噌」という商標が使われていたため、「飛鳥味噌」という名称で注文生産に応じているほか、毎年、歳旦祭に奉納している。完全に古が復活したのである。

嶋田稔さん

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