岡本さんは奈良や東京でいくつもの勉強会を主宰。岡本さんの博識ぶりや人柄を慕う人は多い。そんな人と人とのつながりが、こうした商品の復活の原動力になっている。
若草山のふもとにある奈良最古の宿『むさし野』が出すオリジナル郷土食「遣水(けんずい)」も岡本さんの監修だ。大和に伝わる「おやつ」をセットにした。奈良のっぺいや雑煮、ほおの葉めし、三輪そうめんの三年物と新物の食べ比べなどを完全予約制で提供している。茶粥を食べる大和には間食文化が根付いていたというが、最近は奈良の人でもほとんど食べなくなった。それを何とか残そうというわけだ。
むさし野で提供される「遣水」
左から岡本彰夫さん、むさし野・山下育代さん、筆者
新商品は新しいアイデアから生まれてくるものばかりではない。古をたずねることで、今の時代でも受ける新商品が生まれてくるのだ。
『むさし野』の女将の山下育代さんは次なる企画も考えている。奈良の社寺に伝わったおもてなし料理の逸品を会席料理に組み込めないか、というのだ。岡本さんが掘り起こした昔からの知恵を今に蘇らせる取り組みは、まだまだ続編がありそうだ。
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