2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年8月10日

オバマの勇気を称賛

 今回、オバマは退任時、駐アフガン米軍を8400人残すとの決定をしました。任期中にほぼ完全撤退するとの選挙運動中の公約を変更したのですが、社説は、こういう変更をしたオバマの勇気を称賛しています。公約違反を咎めてはいません。

 撤退予定の公表は敵の期待に大きな影響を与えます。いつまで頑張ればいいのかを敵に示すことになり、戦局に大きな影響を与えることになります。それに、撤退の判断は現地の状況にかかわるので、タイムテーブルを前もって示すこと自体、賢明とは言えません。オバマ大統領が撤退のタイムテーブルを前もって示したことは過ちでした。これをいま変更したのは勇気ある決断と言ってよいでしょう。自分のレガシー残しなどを考慮外に置いたとすれば、これも立派なことです。

 タリバンがこの決定にどう対応するかはまだ分かりません。和平交渉に出てくるか、どうせ米は引き下がると見て、攻勢を強めてくるか、分かりません。しかし、後任の大統領に色々な決定の可能性を残したことは確実です。ただし、それがクリントン、トランプにとって歓迎できることかどうかは分かりません。難しい決定を先送りしたという面もあるからです。

 アフガン政府軍は今なお弱体であり、タリバンとの交渉に持ち込めるような力があるのか、疑問です。今回の決定で和平交渉が始まるかどうかについては、否定的に考えるべきでしょう。15年以上支援してきても、ものにならない政府軍に期待しても、どうしようもない気もします。米国の資源も限られているので、アフガンにどれほど注力するかはよく考えるべき論点でしょう。
オバマはタリバンが任期中にカブールに凱旋するのを避けたい、NATO同盟国も参加している戦闘を放棄する形になることを避けたかった、との解釈もあり得ますが、動機を詮索してもあまり意味はありません。ともあれ、この決定によりアフガンの現状は今しばらく続くことになりました。
 

  
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