─やはり見る庭と考えていいのでしょうか。
芳澤 我々にとっては訪れて見る庭です。観賞の対象でいいんですよ。
重森 欧米の人たちにも人気があります。彼らは現代アートが好きなので、意味がわからないものに面白さを感じるんでしょうね。
芳澤 江戸時代にも諸説あったけど、現代になって謎が加速していますよね。昭和50(1975)年に、エリザベス女王が訪れて世界的に知られたこともありますが、昭和38年に、金閣寺、龍安寺、仁和寺をつなぐ観光道路ができたことは大きいですね。今の「きぬかけの路」です。まず、金閣寺に人が集まり、次に龍安寺。同じ庭でもぜんぜん違う。金閣寺の後に龍安寺を訪ねたら、インパクトありますよ。
重森 真逆の庭ですね。
合原 人それぞれの見方を受け入れる場ができている。ふところの深い庭です。
芳澤 歴史とともに多種多様な情報が付け加えられ、庭が思想を伝える一つの道具として洗練されたわけです。100年後は、さてどうなっているでしょうね。
(構成/文・田中敦子)
●合原一幸(あいはら・かずゆき)
1954年、福岡県生まれ。東京大学生産技術研究所教授、同最先端数理モデル連携研究センター長。専門はカオス工学、数理工学。近刊は『暮らしを変える驚きの数理工学』。
●重森千靑(しげもり・ちさを)
1958年、東京都生まれ。作庭家。重森庭園設計研究室主宰。京都工芸繊維大学非常勤講師。庭園設計をはじめ、庭園の歴史や魅力を伝える著述や講演でも活躍。著書に『京の庭』など。
●芳澤勝弘(よしざわ・かつひろ)
1945年、長野県生まれ。禅文化研究所主幹、花園大学教授などを歴任。現在、同大学国際禅学研究所顧問。専門は禅学、禅宗史。『白隠禅画をよむ』『「瓢鮎図」の謎』ほか著書多数。
●田中敦子(たなか・あつこ)
東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。工芸、きもの、伝統文化を中心に、書き手、伝え手として活動。『もののみごと』(講談社)、『更紗 美しいテキスタイルデザインとその染色技法』(誠文堂新光社)ほか著書多数。
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