(出所)各種資料をもとにウェッジ作成 拡大画像表示
取材班は同社の石積忠夫社長に、こうした「疑念」について尋ねたところ、「国際見本市(展示会)が日本経済を復活させる」というタイトルの資料を用いて、国際見本市の経済効果がいかに高いかについて説明したうえで、「自ら自治体に売り込んだのではなく、高崎、名古屋、沖縄など、自治体から講演の要請があったところへ赴き説明を行ったまでです。当社は地方経済を活性化する手段の一つとして展示会のもつ可能性を訴えただけで、最終的に施設を建設するかどうかは自治体の問題です」と答えた。
また、「施設単体での収支を考えること自体がナンセンスで、施設の赤字は当然です。国際見本市の開催が可能な施設は港湾や空港、道路などと同じインフラで、稼働率を問うのもナンセンスです。供給が需要をつくるという考え方も海外にはあります。訴えたいのは、日本は大規模会場がなく、機会損失が多発しているということです。国際見本市の会場は大きければ大きいほど経済効果が高く、海外では地方にも5万平方メートルを超す大規模会場が多々存在します」とも話した。
国際見本市の開催が可能となる巨大施設の建設は、停滞する地方経済の起爆剤になり得ると説明してくれた。
一方で、人口減少、財政悪化が進む日本の地方の状況は、海外のそれと同じではないため、そうした日本の地方の特異な実情に沿った形で回収可能な投資をしっかりと検討する視点も各自治体に求められるだろう。
政府が旗を振って推進するMICE。昨今、様々な自治体がその名のもとに巨大施設の建設計画を進めているが、MICEの実施には、アクセス、宿泊施設、観光資源等の充実が必要であり、ハコモノ建設が目的となってはいけない。施設を建設すること以上に、建設後の運用についてもしっかりと検証するべきである。
高度経済成長期以降、地方自治体がこぞって要望し、建設が進められてきた地方空港は現在、そのほとんどが多額の税金を使って赤字を補填している。各地で建設される巨大なMICE施設が、近い将来「第二の地方空港」とならないことを願うばかりである。
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