2024年11月24日(日)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月18日

 ニューヨーク市マンハッタン区チェルシーで街頭に立ち有権者を対象に支持を訴えた際、バーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)を支持する若者の女性は、「ジェンダーで投票を決めません」と断言したのです。それに対して中西部アイオワ州デモインで戸別訪問を行ったとき、クリントン陣営が標的としていた高齢者の白人女性は、「生きている間に女性大統領をみたい」と語っていました。明らかに、民主党内にクリントン候補に対して意識の世代間の溝が存在していました。クリントン候補は若者を熱狂的にしてそれを埋めることができなかったのです。現場の視点でクリントン敗退を分析しますと、オクトーバーサプライズといった外的要因のみならず、支持者並びに選対内の熱意といった内的要因の影響も看過できないのです。

クリントンとオバマの「異文化連合軍」

 異文化連合軍は、主として女性、アフリカ系、ヒスパニック系及び若者から構成されています。クリントン候補は、2012年米大統領選挙でオバマ大統領が用いた異文化連合軍のモデルを採用し選挙を戦いました。

 同じ選挙モデルを用いたにもかかわらず、出口調査によりますとクリントン候補は、女性、アフリカ系、ヒスパニック系並びに若者(18-29歳)のいずれにおいても、オバマ大統領よりも票を獲得できませんでした。

 たとえば、2012年オバマ大統領がアフリカ系の93%を得たのに対して、クリントン候補は88%で5ポイント落としています。一方、ヒスパニック系は同大統領が71%、同候補が65%で6ポイントも下げました。

 若者もみてみましょう。オバマ大統領は若者の60%を獲得したのに対して、クリントン候補は55%です。驚いたことに、同候補は女性票に最も期待していましたが、わずか1ポイント差ですが同大統領を下回っています。同候補の冷めた異文化連合軍は、トランプ候補の白人労働者及び退役軍人を核とした熱狂的な「同文化連合軍」に敗れたのです。

メッセージの空白

 2015年4月クリントン候補は、インターネットを通じて「中間層のために戦う」というメッセージを発信して出馬宣言しました。ところが、筆者が同年8月に東部ニューハンプシャー州コンコードで戸別訪問を実施した際、クリントン陣営が標的としていた無党派層の50代の白人女性がこう語ったのです。

 「中間層と戦っているのはヒラリーではなくトランプだ」

 すでに同候補のメッセージは無党派層から否定されていました。2015年12月に再度コンコードに入り戸別訪問を行うと、トランプ候補のメッセージである「米国を再び偉大な国に取り戻す」は、確実に有権者に浸透していたのです。


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