2024年11月23日(土)

World Energy Watch

2016年11月23日

日本企業のメリットは?

 さて、トランプの環境・エネルギー政策は日本企業に影響を与えるのだろうか。まず、今後化石燃料の開発には優遇策が講じられることになるだろう。例えば、連邦政府所有地での開発を容易にする、あるいは、税額、ロイヤルティーを減額するなどの施策が考えられる。米国でのエネルギー資源開発の権益を保有している日本企業にはメリットがある。

 最も重要な点は、米国のエネルギーコストが引き続き世界の中で圧倒的競争力を持ち続ける可能性が高いことだ。トランプは、炭素税、あるいは二酸化炭素の排出量取引はエネルギーコストの上昇を招くとして、反対の立場を鮮明にしている。共和党の政策綱領にも明記された。炭素に価格がかからず、国内の化石燃料の採掘を容易にする政策が採用されれば、米国のエネルギーコストは圧倒的競争力を維持することになる。

 図-3は、日米独の電炉向けの電気料金を示している。固定価格買い取り制度の賦課金を免除されているドイツよりも、米国の電気料金が競争力を持っている。シェール革命により天然ガスが価格競争力を持ち、米国の電気料金は図-4の通り家庭用において多少の上昇はあるものの、他先進国との比較では圧倒的に競争力を維持している。米国に進出している日本企業はこのメリットを受けている。さらに、シェールガスを原料として使用するため米国に進出を考えている化学関連メーカーにもトランプの政策は朗報だろう。

 再エネ支援策の見直しと同様に不透明なのが、自動車の排ガス規制と電気自動車(EV)への連邦政府の支援策の先行きだ。欧米メーカーがEVに力を入れる中(「次世代自動車競争、欧米に続き韓国も、大丈夫か? 日本車」)最近日本メーカーもEVに舵を切ったように思えるが、米国の政策が変われば、日本を含め世界のメーカーに影響がでてくる。その中でも11月17日に太陽光パネル業者のソーラーシティを2200億円で以て買収する決定をしたばかりのテスラは、大きな影響を受ける可能性がある。

 もう一つ見逃せないのが、石炭支援のトランプは、オバマが決定した米国輸銀の途上国の石炭火力発電設備への融資禁止を見直す可能性が高いことだ。石炭火力発電設備を得意とする日本の重工メーカーには間接的な支援になる。ただし、CCSの将来は全く不透明となった。米国でCCSに関与する日本企業は苦しい立場になる可能性がある。

 トランプが大統領に就任し、具体策を打ち出すまで分からないが、現時点での予想に基づけば、日本企業もエネルギー・環境政策のメリットを享受できる可能性がかなりありそうだ。 

  
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